『主任警部モース』( 原題:Inspector Morse)はイギリスの放送局ITVで1987年~2000年にかけて全33話が放送された刑事ドラマ。 イギリスの推理作家コリン・デクスターの代表作『モース警部』シリーズをドラマ化した作品です。
1960年代を舞台に、モース警部の若かりし頃を描いた『刑事モース〜オックスフォード事件簿〜』(原題:Endeavour)も製作されるなど人気の作品となっています。
『主任警部モース』では、モース警部が部下のルイス刑事と難事件を解決していく姿を描いています。 イギリスではシャーロック・ホームズをしのぐ人気を誇っているそう。 世界70か国以上でオンエアされ、高い視聴率を記録。今なお愛されているミステリードラマです。
『主任警部モース』のエピソードリスト
- 第1話「ジェリコ街の女」"The Dead of Jericho"
- 第2話「ニコラス・クインの静かな世界」"The Silent World of Nicholas Quinn"
- 第3話「死者たちの礼拝」"Service of All the Dead"
- 第1話(通算4話)「消えた装身具」"The Wolvercote Tongue"
- 第2話(通算5話)「キドリントンから消えた娘」"Last Seen Wearing"
- 第3話(通算6話)「日の沈む時」"The Settling of the Sun"
- 第4話(通算7話)「ウッドストック行最終バス」"Last Bus to Woodstock"
- 第1話(通算8話)「ハンベリー・ハウスの殺人」"Ghost in the Machine"
- 第2話(通算9話)「最後の敵」"The Last Enemy"
- 第3話(通算10話)「欺かれた過去」"Deceived by Flight"
- 第4話(通算11話)「カー・パーク5Bの謎」"The Secret of Bay 5B"
- 第1話(通算12話)「邪悪の蛇」"The Infernal Serpent"
- 第2話(通算13話)「ラドフォード家の遺産」"The Sins of the Fathers"
- 第3話(通算14話)「死を呼ぶドライブ」"Driven to Distraction"
- 第4話(通算15話)「魔笛〜メソニック・ミステリー」"Masonic Mysteries"
- 第1話(通算16話)「メアリー・ラプスレイに起こったこと」"Second Time Around"
- 第2話(通算17話)「ファット・チャンス」"Fat Chance"
- 第3話(通算18話)「誰がハリー・フィールドを殺したのか?」"Who Killed Harry Field?"
- 第4話(通算19話)「ギリシャ人の贈り物」"Greeks Bearing Gifts"
- 第5話(通算20話)「約束の地」"Promised Land"
- 第1話(通算21話)「デッド・オン・タイム」"Dead on Time"
- 第2話(通算22話)「ハッピー・ファミリー」"Happy Families"
- 第3話(通算23話)「モース イタリアの事件」"The Death of the Self"
- 第4話(通算24話)「有罪判決」"Absolute Conviction"
- 第5話(通算25話)「ケルビムとセラフィム」"Cherubim and Seraphim"
- 第1話(通算26話)「アヴリルの昏睡」"Deadly Slumber"
- 第2話(通算27話)「サタンが巣くう日」"The Day of the Devil"
- 第3話(通算28話)「神々の黄昏」"Twilight of the Gods"
『主任警部モース』の評価は?
- IMDbの点数 8.1(9009人の評価)
IMDbでは8.1点の高評価を獲得。
IMDbの点数の目安
海外大手映画データベースIMDb(インターネット・ムービー・データベース)の点数は10点満点評価。IMDbユーザーがつけた平均点が表示されます。感覚的には、評価の人数が多く、6.5点以上ならまあまあ、7点台なら楽しめる作品、8点以上は傑作になっていると思います。日本での『主任警部モース』の放送・配信情報
※作品の配信情報は2019年11月時点のものです。放送・配信が終了している、または見放題が終了している可能性がございますので、現在の配信状況については各配信サービスのホームページもしくはアプリをご確認ください。
- NHK BSプレミアムでは2019年11月23日(土曜)から HDリマスター版が放送。
- 動画配信はされていないようですが、DVD化されています。
※ここから『主任警部モース』第1話「ジェリコ街の女」のネタバレがあります。注意してください。
『主任警部モース』第1話「ジェリコ街の女」のあらすじ
- 『主任警部モース』シーズン1 第1話「ジェリコ街の女」
- Inspector Morse Season1 Episode1 "The Dead of Jericho"
モースは同じ聖歌隊のメンバーで、ピアノ教師のアンに好意を寄せていた。しかし、その後、ジェリコ街に住むアンが首をつって死んでいるのが発見される。 アンは、内弟子の学生で薬物中毒のネッドには財布から金を盗まれ、向かいに住むジャクソンからはのぞきの被害を受けていた。
モースはアンの事件を捜査するが、事件を担当するベル主任警部からは容疑者扱いされてしまう。
アンは、既婚者で音響機器の会社社長アラン・リチャーズと不倫関係にあった。 アンは解剖の結果、死亡時に妊娠していたことが分かる。さらにアンは昔、男の子を出産していた。
モースは、アンが養子に出した子がネッドで、オイディプス王のように実の親子で通じた末に子どもができ、アンは自殺したと推理する。 しかし、その推理は間違っていた。
アンの事件を匿名で通報したジャクソンも殺される。 ジャクソンはアンの遺書を釣り竿に隠し、アラン・リチャーズのことを脅迫し、250ポンドを脅し取っていた。 しかし、その前に届いた脅迫状はジャクソンが書いたものではなく、アンを苦しめたリチャーズへの復讐心でネッドが書いたものだった。
ジャクソンの釣り竿から見つかったアンの遺書にはリチャーズへの恨みが書き連ねられていた。 アラン・リチャーズは弟のトニーになりすまし、金を回収に来たジャクソンのあとをつけ、アンの遺書をめぐって争いに。そして、ジャクソンの頭をベッドの柱にぶつけて、殺していた。
アリバイがあったのも、弟のトニーがずっとアランのフリをしていたからだった。 アンが自殺したのは、不倫相手アラン・リチャーズの残酷な扱いに耐えかねてのこと。
アンが死んだ日、ネッドは財布から金をとり、ジャクソンは遺書をとり、アデルは夫アランがアンに書いたラブレターをとっていたのだった。
『主任警部モース』第1話「ジェリコ街の女」の感想
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』では、若かりし頃のモースが描かれていますが、『主任警部モース』と見比べてみると面白いですね。 『刑事モース~オックスフォード事件簿~』でモースやサーズデイ警部が運転する車は、黒のジャガーでしたが、『主任警部モース』では真っ赤なジャガー。最後に流れるテーマ曲も『刑事モース~オックスフォード事件簿~』と『主任警部モース』で同じのようです。
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』にも登場している監察医のマックス・デブリンやストレンジも登場。 『刑事モース~オックスフォード事件簿~』では、ストレンジはモースの部下でしたが、『主任警部モース』では追い抜かれ、ストレンジが先に警視正になっていますね。
モースの愛車である真っ赤なジャガーですが、初っ端から犯人を止めるため激突されるハメに。 さらに、せっかく修理が終わったと思ったら、犯人のアラン・リチャーズを阻止するため、またもや修理に出さなければならないハメになるのでした。
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』の原題は”Endeavour”(エンデバー)。 ひどい名前だと『主任警部モース』では、ファーストネームの「エンデバー」は最後まで出てこないそうです。
それにしても、モースはかなりの酒好きですね。 部下のルイスの誕生日を祝おうと、朝からお酒を飲もうとする始末…。 部下になったルイスも頻繫に飲みに誘われたりと、大変そう。監察医のマックスやストレンジ警視正とも、よく飲みに行っているようです。
警察だけは似合わないってタイプと言われたり、歌う警官、規格外と称されるモース。 警視に昇進できなかったのも、率直にものを言いすぎるきらいがあるからとストレンジ警視に言われてしまうのでした。 でも、そこがモースのいいところですね。
モースが好意を寄せるアンが死亡
今回の事件では、モースが好意を寄せていたアンが死亡。 殺されたのではなく、自殺したことが判明しますが、アンのまわりには怪しい容疑者がうじゃうじゃ。
アンが目をかけていたネッドは薬物中毒。アンの財布から金を抜き取っていたネッド。 そして、向かいに住むジャクソンはアンをのぞき見。 アンはアラン・リチャーズと関係があったことも発覚。
のぞき見をするジャクソンが合鍵を持っているというのが恐怖…。
モースはアンが読んでいたソフォクレス著の『オイディプス王』からヒントを得て、近親相姦がアンの自殺の原因だと推理。
しかし、この推理はハズレ。モースの推理が冴えわたったと思ったら、全然違っていたのでした。
『オイディプス王』はギリシャの詩人 ソフォクレスが書いた物語で、エディプス・コンプレックスの元になった話。
オイディプース
オイディプース( 古希: , ラテン語: Oedipus)は、 ギリシア神話の登場人物である。 長母音を省略して オイディプス、あるいは エディプスとも表記される。 テーバイの王 ラーイオスとその妻 イオカステーの間の子。名前は「膨れ上がった足」の意味。実の父を殺し、実の母と 親子婚を行ったため、オイディプースの名は「 エディプスコンプレックス」の 語源 になった。 ...
知らないうちに実の母イオカステと結婚し、以前、路上で殺したのが父親だったオイディプス王。 オイディプスの実の母と知ったイオカステは、首をつって自殺。 オイディプスも自らの目をえぐり出したという結末。 壮絶な物語ですね…。
モースはアンとネッドも、『オイディプス王』の物語のような関係になったことに悩み、アンはイオカステのように首をつって自殺。ネッドも自分の目をえぐり出そうとしたと推理。
アンの自殺した日がちょうどネッドの誕生日だったことからも、そう推理したモースでしたが、現実には『オイディプス王』のような壮絶な出来事は起こっていませんでした。 物語に一致しすぎて、モースはつい先走ってしまったようです。教養が逆に推理の邪魔になってしまったようですね。
向かいに住むジャクソンも死亡
ジャクソンはアンの遺書を盾に、アラン・リチャーズを脅迫し、殺されることに。 ネッドもジャクソンも、アンの自殺遺体を発見したのに、ネッドは金をとり、ジャクソンは遺書を奪っていったというのが切ないですね。
アラン・リチャーズの妻アデルは、ちょうどアンが自殺した日に、夫がアンに書いたラブレターをさがすためアンの家へ。 それで、アラン・リチャーズの車がアンの家の近くに止まっていたのでした。 階段に折りたたみ傘が置いてあったのも、アデルが2階にいたからのようですね。
アラン・リチャーズを脅して金を払わせたジャクソンは殺されることに。 それにしても、兄のアランと弟のトニーを勘違いさせることで、アリバイを作っていたことにびっくり。
スキャンダルをおそれて、アランはアンの遺書をどうしても取り戻したかったようですね。 ジャクソンを殺した後も、ジャクソンの家に侵入して、アンの書いた遺書を探し回っていたアラン。
アンの遺書は、ジャクソンの釣り竿の中に。釣り竿は警官がちゃっかり自宅に持ち帰って、自分の物にしようとしていたようです。アンの遺書が見つかってよかったですが、証拠品を家に持ち帰っちゃ駄目。 ルイスも怒っていましたね。
アンは不倫相手のアランに長年、振り回され、アランの子どもを妊娠したことでも悩み、自殺を決意したようですね。 ネッドは、遺書を見て、アランがアンを自殺に追い込んだことを知り、アランへ脅迫状を書いていたのでした。
まさか、脅迫状を書いたのがジャクソンではなかったのが驚きでしたね。 ネッドとアンは、モースが考えていたような関係ではなく、ネッドは「女と寝たことがない」のでした。
ネッドは純粋に母親のようにアンを慕い、アンも息子のようにネッドを気にかけていただけだったようです。
ネッドに、不潔な不倫おやじと呼ばれたり、スパイクで頭を殴られて流血したモースですが、ネッドを逮捕せず、自由の身に。 脅迫の手紙も燃やしてしまえとアドバイスするモースはやさしいですね。
聖歌隊での、モースの恋はほろ苦い形で終わってしまうのでした。
『主任警部モース』第1話「ジェリコ街の女」の中で流れた曲
- My Soul there is a Country - Hubert Parry & Henry Vaughan
- Gloria in Excelsis Deo - アントニオ・ヴィヴァルディ
- Prelude in E-Minor (op.28 no. 4) - フレデリック・ショパン
- Concerto No. 14 in E-flat major, K. 449 - モーツァルト
- Le Nozze di Figaro K492 act 2, Porgi Amor (The Marriage of Figaro)’ - モーツァルト
- Don Giovanni, K.527, Act 1: Ah, Chi Mi Dice Mai - モーツァルト
- Quartet No. 12 in B flat major, K. 172 - モーツァルト
- Fantasie Impromptu Opus 66 in C sharp minor - フレデリック・ショパン
- Concerto grosso Op.3 No.1 - ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
- “Haffner” Symphony - モーツァルト
- Inspector Morse Theme - Barrington Pheloung