- 『主任警部モース』シーズン8 第2話「カインの娘たち」
- Inspector Morse Season8 Episode2 "The Daughters of Cain"
※ネタバレしています。
『主任警部モース』シーズン8 第2話「カインの娘たち」のあらすじ
ウールジー・カレッジで大学の寄付金集めを担当していたフェリックス・マクルーア博士が刺殺される。 マクルーア博士が住んでいたウールジー・カレッジの学生寮では過去に学生のマシュー・・ロドウェイがドラッグにより、窓から転落死。その直後にマクルーア博士を世話していたテッド・ブルックスが辞め、博物館の警備員に転職していた。
テッドは妻のブレンダや義理の娘ケイに暴力をふるい、虐待していた。教師のジュリア・スティーブンスは家政婦のブレンダの雇い主で、個人的にも親しくしていた。ジュリアは脳腫瘍で余命わずかだと診断される。
マクルーア博士が殺された日曜の後、テッドも刺殺され、川で死体が見つかる。テッドが殺されたナイフはマクルーア博士殺しの凶器と特徴が一致するが、それは昨日 博物館のから盗まれたばかりのはずの短剣で、日曜のマクルーア博士殺しに使えたはずはなかった。
テッドは転落死したマシュー・・ロドウェイに麻薬を売っていた。マクルーア博士は学生に麻薬を売るのをやめるように警告したが、テッドはやめず、警察に通報しようとしていた。 テッドは警察に通報しようとするマクルーア博士を殺すため、土曜日に博物館から短剣を盗んでいた。
テッドはマクルーア博士を刺殺後、月曜日に短剣を博物館にこっそり返すはずだったが、テッドは心臓発作を起こして入院。 短剣が盗まれたことは気付かれず、テッドがマクルーア博士を殺した短剣でジュリア・スティーブンスがテッドを殺害したのだった。
ジュリアは生徒のケヴィンに体の関係と引き換えにテッド殺害を手伝わせていた。 博物館でテッドが殺される直前に短剣が盗まれたと思わせるため、展示ケースの鍵をケヴィンに壊させ、ブレンダやケイ、ジュリア自身のアリバイを完璧なものにしていた。
モースはジュリアが犯行を計画し、ブレンダ、ケイが共犯者だと推理。もう一人の共犯、博物館で泥棒騒ぎを起こしたのは、ケイの婚約者アシュリー・デイヴィスだと推理するが、間違っていた。
ジュリアは自分がテッドを殺したと告白した手紙を残し、脳腫瘍で亡くなる。 モースとルイスは共犯者のブレンダとケイを追及するが、証拠がなく、釈放になる。
モースはジュリアが利口だったことを認め、39歳で亡くなったジュリアの葬儀に参列するのだった。
『主任警部モース』「森を抜ける道」前回のあらすじと感想はこちら≫『主任警部モース』シーズン8 第2話「カインの娘たち」の感想
警察も大学も資金繰りに苦労しているオックスフォード。 モースのもとにも、大学から寄付を募る電話があり、「ふざけたことばかりやってるから破産寸前にまで追い込まれるんだよ」と激怒。
モースは確か、大学を中退していたはず…。中退者にもかけてくるなんて、よほど切羽詰まっていたのでしょうか…。
警察署では経費削減がすすめられ、ルイスの昇進も厳しいようです。さらに、主任警部と警部が統合される恐れも。モースもただの警部になってしまうのでしょうか…。
マクルーア博士が殺された大学の学寮長はスキャンダルで寄付金が集まらないことばかり心配…。 人が殺されたのに、金のことしか考えていない学寮長にはがっかりですね。
凶器の短剣
マクルーア博士を殺したのは、学生に麻薬を売っていたテッド。 妻や義理の娘を殴ったり、学生に麻薬を売ったりと本当にひどい奴だったテッドは、殺人にまで手を染めていました。
テッドが務めるピットリバース博物館は実際にオックスフォードにある博物館だそう。
ピットリバーズ博物館
ピットリバース博物館は Pitt Rivers Museum ...
飾ってある干し首が不気味でゾッとしますね。
思ったよりもずる賢かったテッドは博物館からこっそりと短剣を盗み出し、マクルーア博士を殺害。 その後、凶器の短剣を博物館に戻し、凶器が見つからないようにする計画を立てていました。
しかし、心臓発作が起こり、博物館に短剣を戻せない事態に。 悪いことは計画通りに行かないものですね。 その短剣で、テッド自身も殺されることになったのが、因果応報。
脳腫瘍で余命わずかだと診断されたジュリアは生きている間に何かしようと、ブレンダに長年暴力をふるうテッドを殺すことを計画したようです。
テッドの義理の娘ケイは高級コールガールとして働き、ケイ・ブルックス(Brooks)ではなく、ケイ・バッハ(Bach)と名乗っていました。 ドイツ語のバッハは、英語ではブルック。 作曲のバッハと同じことや、ケイの偽名だとすぐに見抜くモースはさすがですね。
ケイはマクルーア博士とはプラトニックな関係でいい友人同士。 ケイはマクルーア博士を父親のように慕っていたようです。
モースはケイに会う前に髪をミラーでチェックしたり、手を握り返したりとまんざらでもない様子なのが面白いですね。
共犯者ケヴィンのことは謎のままに
ケイがビニールシートやダクトテープを購入していたのは、テッドの死体を包むためでした。 テッドが博物館から盗んだ短剣でテッドを殺したジュリア。 そのナイフは妻のブレンダが見つけたものだったようですね。
生徒のケヴィンにも犯行を手伝わせていたジュリア。 博物館で泥棒騒ぎを起こし、テッドの死体を川へ運ぶのを手伝ったのもケヴィンだったようです。
ジュリアはテッドを1人で殺したことを手紙で告白し、死亡。 ケヴィンのことは誰にも知られずに、墓場まで持っていったジュリア。
モースもジュリアが利口で格上だと認めざるを得ないのでした。 脳腫瘍を患っていたにもかかわらず、綿密な計画を立て、実行に移したジュリアには確かに感心しますね。
ブレンダもケイも罪を問われることなく釈放に。 ブレンダもケイもテッドからの虐待に苦しんできたことで、すでに罰は受けてきたと言えるのかもしれませんね。 それに、共犯者のケヴィンも車の横転事故でけがをして、罰を受けたと言えるかも。
家庭内暴力をふるうテッドは殺人犯でもあったし、こんな言い方はしたくないですが、殺されて当然だったと言えますね。
「夜明けの輝きは称えるべきかな。されど寝床の中にあるこそ真の天国なり」は、イギリスの詩人ワーズワースの言葉をひねったもののようです。ワーズワースの言葉では「寝床」ではなく、「若さ」となっています。
「ここは神話が死んでから生まれる伝説の地」- ジェイムス・フェントン
「明日も、その明日も、そのまた明日も、毎日毎日を這うように進むしかない」
「この短剣はあの短剣ですか?」 -
シェークスピアの『マクベス』
「彼女の心は引き出しのナイフのように乱れていた」 -
イギリスの詩人 フィリップ・ラーキン『ごまかし』
など数多くの引用が登場しましたね。
今回のエピソードタイトル「カインの娘たち」の「カイン」は旧約聖書に登場する人物。 カインは弟のアベルを殺害し、人類最初の殺人を犯した人物として知られています。
カインとアベル
カインとアベルは、旧約聖書『創世記』第4章に登場する兄弟のこと[1]。アダムとイヴの息子たちで兄がカイン(קַיִן)、弟がアベル(הֶבֶל)である。人類最初の殺人の加害者・被害者とされている。 カインとは本来ヘブライ語で「鍛冶屋、鋳造者」を意味し、追放され耕作を行えなくなったカインを金属加工技術者の祖とする解釈も行われている。アベルとは「息」(=「霊、命」)を意味する[2]。 この説話を、「遊牧民(=アベル)と農耕民(=カイン)の争い、遊牧民の農耕民に対する優越性を正当化するもの」と、解釈する向きもある。
モースも負けを認めたジュリア・スティーブンス役を演じているのは、『ダウントン・アビー』で家政婦長のヒューズさん役で知られるフィリス・ローガンです。
『主任警部モース』の登場人物・キャスト
ドラマで流れた曲
- La Traviata – Prelude to Act 1 - ジュゼッペ・ヴェルディ
- String quartet in g minor, Op.74, No.3 - フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
『主任警部モース』のエピソードリストと主な登場人物・キャストの一覧 はこちらへ≫