- 『主任警部モース』シーズン2 第4話(通算7話)「ウッドストック行き最終バス」
- Inspector Morse Season2 Episode4 "Last Bus to Woodstock"
※ネタバレしています。
『主任警部モース』シーズン2 第4話(通算7話)「ウッドストック行き最終バス」のあらすじ
ある雨の日の夜、ウッドストック行きのバスを待っていたシルヴィアともう1人の女性。シルヴィアは赤い車をヒッチハイクするが、もう1人はバスに乗る。 その後、シルヴィアはフォックス&キャッスルというパブの駐車場で遺体で発見される。
シルヴィアは保険会社に勤める18歳。パブではジョン・サンダースという青年とデートの待ち合わせをしていたが、そのサンダースが遺体の第一発見者になる。
シルヴィアのハンドバッグには「ミス・ジェニファー・コールビー様 セント・オールゲイツ保険会社気付」と書かれた封筒に、暗号文が書かれた便箋が入っていた。 抜けている文字を並べ、暗号文を解くと、「どうか受け取って Take it please」という言葉が浮かび上がる。 モースは封筒には金も入っていたと考える。
モースはジェニファー・コールビーの家を訪ね、下宿人の学生アンジーや看護師のメアリー・ウィドソンと出会う。 監察医のマックスは姪のマーガレットから夫のバーナード・クローザーの様子がおかしいことを相談される。
モースは英文学専攻のアンジーに誘われ、詩人ジョン・ウィルモットについてのバーナード・クローザーの講義を聞きに行く。
バス停でシルヴィアがヒッチハイクするのを目撃したおばあさんは、その時のライトが壊れた赤い車を覚えており、街で見かけた同じ赤い車のナンバーを控えていた。 シルヴィアが乗った赤い車はマーガレット・クローザーのもので、その夜に運転していたのは夫のバーナード・クローザーだった。
バーナードはヒッチハイクをする黄色のレインコートのシルヴィアを乗せた。もう1人のネイビーブルーのレインコートを着た女性はジェニファー・コールビーの家の下宿人で看護師のメアリーだった。実はシルヴィアは腕を痛め、治療に通っているときにメアリーと顔見知りになっていた。
別れ際、「じゃあ、また明日」と言ったのは、翌日も病院に治療へ行きメアリーと会うからだった。
メアリーは狭心症の治療に来ていたバーナードと知り合い、不倫関係になっていた。メアリーはバーナードの声で気付き、赤い車に乗らなかったが、バスに乗った後も赤い車を捜し、パブの駐車場に止まった車から、もみ合った後のシルヴィアが降りてくるのを目撃。
メアリーはシルヴィアに駆け寄ると、嫉妬で殴りつけ、シルヴィアは倒れた。 その倒れたシルヴィアをバーナードは何も知らずにバックし、車でひき殺していたのだった。
封筒と手紙はジェニファー・コールビー宛てだったが、本当の受取人はバーナードの愛人メアリーだった。 バーナードは暗号遊びが好きだっただけで、封筒に入っていた500ポンドは、教授の最終選考を前にしてスキャンダルを避けるため、メアリーに旅行へ行ってほしかったからだった。
シルヴィアの遺体の第一発見者のサンダースは封筒に500ポンドがあるのを見かけて、ねこばば。金を使い、暴れた末に逮捕される。
バーナードとマーガレットは教授選に影響が出ないように、赤い車のタイヤを森で処分。 その時バーナードは狭心症の発作を起こし、入院する。
メアリーは逮捕され、モースは「愛とその得られる喜びの大きさゆえに、支払うべきツケもまた大きいのだ」というロチェスターの言葉を引用して、病院をあとにするのだった。
『主任警部モース』シーズン2 第2話(通算5話)「キドリントンから消えた娘」前回のあらすじと感想はこちら≫『主任警部モース』シーズン2 第4話(通算7話)「ウッドストック行き最終バス」の感想
ヒッチハイクした女の子が死亡
今回も人間関係が入り組んでいて複雑に。
黄色いレインコートを着た18歳のシルヴィアがパブの駐車場で遺体で発見させることに。 18歳の女の子がヒッチハイクするなんて危なすぎますね。
もう1人のネイビーブルーのレインコートを着た女性は不明でしたが、ひょんなことから誰か分かることになりました。
シルヴィアたちを目撃していたおばあさんの証言が活躍。探偵にあこがれていたというおばあさん。赤い車のライトが壊れていたことを記憶し、街で同じ車を見かけたとナンバーを控えてくれていました。
モースには「探偵フリーク」と言われていたおばあさんでしたが、「じゃあ、また明日」とシルヴィアがに言っていたことも正確に記憶していたことが、ネイビーブルーのレインコートを着た女性が看護師のメアリーだと分かるきっかけになりましたね。
ささいな言葉から誰か突き止めたモースも鋭い!
愛人に送られた暗号文
シルヴィアが持っていた封筒や手紙の暗号文に惑わされそうになりましたが、バーナード・クローザーが愛人のメアリーに送ったものだと明らかに。 書かれていた宛先ジェニファー・コールビーはダミーで不倫を隠すためだったようです。
わざわざ暗号文だったのは、バーナードが暗号遊びが好きだったから。不倫も「奥さんに秘密を持つことが半分楽しみ」というのが最悪…。いい歳をして愛人と暗号遊びをするようなバーナードにあきれるしかない。
最初は節度ある愛人関係だったはずが、メアリーはバーナードを独り占めしたくなるように…。 不倫の行き着く先なんて、幸せになれるわけないのに。
しかも、バーナードは不倫に飽き足らず、ヒッチハイクして、シルヴィアにまで手を出そうとしていたのがどうしようもないですね。
シルヴィアを殺す気はなかったメアリー。 シルヴィアの顔にひっかき傷と殴られた痕があったのは、ひき殺される前にメアリーに殴られていたからでした。 監察医のマックスがパズルみたいだと言っていた理由が明らかになりましたね。
それにしても、暗号文の差出人のEはどういう意味だったのでしょうか…。
こじれる不倫関係
パブの駐車場で事件が発生したということで、モースはさっそくパブでウイスキーを注文。一方、ルイスはセントクレメンツというノンアルコールのカクテルを頼んだようです。
第一発見者のサンダースは内気な青年かと思いきや、シルヴィアの遺体のそばにあった封筒から500ポンドを盗んでいたことが発覚。 その金で、ビリヤードのキューを買い、賭けのカモにされた挙句、クビにされ、激怒し逮捕されることに。 残念過ぎる青年でしたね。
しかも、シルヴィアのペンダントも拾ったと言って、自分の物に。シルヴィアのペンダントはメアリーともみ合ったときにとれたのでしょうか…。
シルヴィアと同じ保険会社で働いていたジェニファー・コールビー。事件に直接関係はありませんでしたが、ジェニファーは上司のクライヴ・パーマーと不倫関係に。 みんな不倫しすぎですね…。
結局、ジェニファーはクライヴ・パーマーに捨てられることに。パーマーはどうせ最初から奥さんと別れる気なんてなかったはず。
メアリーもジェニファーも不倫と分かっていながら付き合い始めたのは悪いですが、既婚男性に搾取されているだけの気が…。 「男はすべてを所有した気になってる。財産も家族も関わった女たちもな」というモースの言葉は特に不倫男に当てはまりそうです。
不倫男たちも最低でしたが、さらに上を行く最低な男は学生のアンジーをレイプしようとしたニューラヴという男。
まず、指導している学生と寝ようとするのもどうかしていますが、無理やり襲うニューラヴ。 しかも、嫌がっているのに、「君から誘っておいて」とまで言い始める始末…。絶対、他の学生にも手を出していそう。 こんな奴が大学の先生とかありえない。
でも、自分が悪いなんてこれっぽちも思っていなさそうなのが、さらにたちが悪いですね。
詩人ロチェスター伯爵
教授の座を狙うバーナードはジョン・ウィルモットについて講義。 ジョン・ウィルモットはロチェスター伯爵とも呼ばれるイギリスの宮廷詩人。 好色で退廃した生活を送り、梅毒やアルコールなどが原因で33歳の若さで亡くなったそう。
死の床でカトリックに改宗し、無神論を捨てたことが知られているようです。
モースはジョン・ウィルモットが改宗したというのは、教会にとっていい宣伝になるからだと推測。教会に宣伝として使われたという考えがモースらしいですね。
ちなみに映画『リバティーン』では、ジョニー・デップがジョン・ウィルモットを演じています。バーナードは自分をジョン・ウィルモットに重ね合わせ、シルヴィアを轢いたことを後悔していたようです。でも、ジョン・ウィルモットに重ね合わせて、自己陶酔に浸っているだけにも思えますね…。
英文学専攻のアンジーとモースは趣味があったようです。 エドマンド・スペンサーの『フェアリー・クイーン』や、ミステリー小説『月長石』、『トレント最後の事件』も話題に。
『月長石』は1868年に出版されたイギリスのヴィクトリア朝の小説家ウィルキー・コリンズの長編探偵小説。「最大にして最良の推理小説」といわれる古典的名作だそう。
そして、『トレント最後の事件』は1913年に出版されたE・C・ベントリー作の長編推理小説で、ミステリー小説の転換期となった古典的名作と言われているそうです。どちらの推理小説も読んでみたくなりますね。
モースはジョン・ウィルモットの本『The Debt to Pleasure』の「木々がその皮に包まれているように私も愛でお前を包み込もう」という言葉を引用。 キザな言葉ですね。
「脳細胞を活性化させろ」とルイスにビールを飲ませるモース。逆にアルコールで脳の働きが悪くなりそうですが、モースにとっては飲める口実があればいいようです。 でも、いつか体調を崩しそうで心配ですね。
監察医のマックスの姪マーガレット
バーナードの妻マーガレットは監察医のマックスの姪だったという意外なつながりも判明。
バーナードとマーガレットは教授選のためにも、赤い車を森へ。車ごと捨てる気かと思いきや、タイヤだけ捨てたのもびっくり…。 マーガレットも対面が大事だったようです。
不倫の末に死者まで出ることに。 「愛も人を殺す。肉欲よりも愛の方が危険かもしれない」というモースの言葉通りでしたね。
「愛とその得られる喜びの大きさゆえに、支払うべきツケもまた大きいのだ」 不倫の代償は大きかったのでした。
『主任警部モース』の登場人物・キャスト
ドラマで流れた曲
- コジ・ファン・トゥッテ(Così fan tutte) - ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
- Piano Sonata in C (K545) - ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
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