- 【最終回】『マンハント:謎の連続爆弾魔ユナボマー』第8話「判決」
- Manhunt: UNABOMBER Episode8 "USA vs. Theodore J. Kaczynski"
※ネタバレしています。
『マンハント:謎の連続爆弾魔ユナボマー』第8話「判決」のあらすじ
事件の予備審問が始まり、テッドはフィッツの文章解析をもとにした令状は無効だと訴える。しかし、裁判官はフィッツの証言も効かず、令状の有効性を認める。
フィッツはテッドの弁護士ジュディが、心神喪失を訴えるつもりだと知る。 フィッツは弟デヴィッドと弁護士がテッドを妄想型統合失調症だと主張し、心神喪失を訴えるつもりだとテッドに教え、有罪を認めるように迫る。
テッドにとって心神喪失を訴えることは自分の信念は異常者が考えたものとなり、死刑よりも耐え難いことだった。 テッドは裁判で自分の主張を世間に訴えようとしていたが、弁護士は心神喪失を訴え、死刑を回避しようとしていた。
テッドは弁護士に裏切られたことを知り、自己弁護をしようとするが、裁判官は厳しい態度でテッドを戒め、精神障害の有無についてただ頷いて肯定しろと指示される。 テッドは自殺を図るも失敗。
司法取引に応じ、法廷で有罪を認めるのだった。 テッドは終身刑となり、独房に隔離されることに。
ユナボマーの裁判も終わり、フィッツはナタリーの運転する車に乗り、自由なドライブを楽しむ。 だが、他の車が通らない場所で赤信号で止まり、フィッツはふと自分の生活がシステムに支配されている気がして息が苦しくなるのだった。
『マンハント:謎の連続爆弾魔ユナボマー』第7話「令状」 前回のあらすじと感想はこちら≫【最終回】『マンハント:謎の連続爆弾魔ユナボマー』第8話「判決」の感想
テッドは裁判で自分の主張を広めようとするが…
テッドは自分で弁護方針を決め、フィッツの言語分析をもとにした令状が無効だと訴えるのでした。 しかし、弁護士は全く別の弁護方針を立てていました。
弁護士のジュディはチョコレートバーのReese's リーシーズをテッドにあげていましたが、ずっとテッドのことを頭のおかしな異常者だと思っていたようです。 だから、チョコレートバーで手なずけられると思ったのでしょうか…。
テッドは死刑すら恐れておらず、むしろ裁判で自分の主張を披露し、世間に広めようという目的が。 死刑も恐れない人間に対して、犯罪を抑止する方法はあるのでしょうか…。
弟デヴィッドと弁護士は、テッドが妄想型統合失調症だと主張し、死刑を回避させようと画策。 それはテッドにとって、自分の信念がおかしな妄想だと思われる 許せない裏切り行為でした。
弟デヴィッドの気持ちを思うといたたまれないですね。兄を愛しているからこそ、兄が精神障害だと主張し、心神喪失ということにしようとしたのに、兄には裏切り者のユダだと思われてしまう…。
テッドにとっては、弟デヴィッドも弁護士も裏切り者。 自己弁護をしようとしますが、裁判官はそれを拒否するのでした。
何も言わずに頷いて肯定するようにと指示されるシーンはテッドの無力感があふれていましたね。
弁護士の作戦を見抜いていたフィッツは、テッドに有罪を認めるようにすすめ、空軍基地に運び込まれた山小屋を見せることに。
小さな山小屋がヘリで運ばれていくシーンは現実的ではなく、どこかメルヘンチック。 森の外に出ると山小屋の小ささが際立ちます。
「従うことしか知らない人は価値観の違うものを頭のおかしな異常者だとみなして、たとえ正当な主張であってもまともに取り合わない」と声明文にあった言葉を引用するフィッツ。
正当な主張だったとしても、人殺しをすれば、正当性は失われるとは思わなかったのでしょうか…。 主張より、爆弾魔ということしか人々の記憶に残らないことは分かるはずなのに。
裁判官は第二のランス・イトウ判事になる気はないと、テッドに厳しく対応。 ランス・イトウ判事はOJシンプソンの裁判の裁判官。 ランス・イトウ判事が裁判のTV中継を認める決定をしたことは物議を醸したそう。
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フィッツはテッドの思想に心酔していましたが、テッドとの決定的な違いは被害者の気持ちを推し量ることができたということ。 いくらテッドの信念が正しくて、心惹かれるものだったとしても、テッドが被害者にしたことは許されないと、被害者のために動くフィッツ。
クギが100本も刺さっていたという聞いただけで残酷な被害者の最期や、命は助かったものの体の傷と心の傷を負うことになった被害者たちの声が心に刺さります。
もし、心神喪失を訴え、テッドが有罪にならず、医療刑務所からいずれ釈放され、悪事を続けていたらと思うとゾッとしますね。 心神喪失で無罪になったとしたら、遺族や被害者たちはどんな正義も信じられなくなってしまいそう…。
被害者のエプスタイン氏が訴えていたように、犯人には被害者が受けた傷と同じ苦しみを味わうべき責任があるはず。
テッドも被害者の人たちの声を聞いて、自分の主張を裁判で披露することはできませんでした。
テッドは有罪を認め、独房へ
テッドは終身刑に。 それとは別に30年の懲役刑と3回連続の終身刑という死んでも刑務所から出ることが許されなさそうな判決が。
アメリカではこういう刑が言い渡されるのもすごいですね。テッドは窓一つない独房に閉じ込められることに。
一方、フィッツはテッドを置いてあの山小屋を出て、ナタリーと気ままにドライブ。 事件は解決し、テッドのことは過去となり、開放的な雰囲気でしたが、そこに立ちふさがる赤信号が…。
フィッツにはテッドの信念が深くしみ込んでしまい、拭い去ることはできそうにないですね。
真っ赤な信号が不気味に光り、テッドは切り離せても、テクノロジーやシステムに支配された生活からは逃れられないことを示しているようで、考えさせられるラストシーンでした。
『マンハント:謎の連続爆弾魔ユナボマー』はこのエピソードが最終回。 昔の事件でしたが、テッドが警告していた「テクノロジーに支配された生活」というのは現在でも響く主張で、スマホに依存し、縛られていることを思い知らされた気がします。
それでも、テクノロジーを全部、捨てて、テッドのように原始的な生活をしろというのも、無理。 便利なものを使いながら、テクノロジーとうまく付き合っていくしかないのかもしれませんね。
ユナボマーことテッド・カジンスキーは現在も服役中だそうです。
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