『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case14「死を呼ぶチェス」(「死のゲーム」) あらすじと感想・曲 ネタバレ注意!

※ネタバレしています。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』
Case14「死を呼ぶチェス」(「死のゲーム」)"Game"のあらすじ

1967年夏、サーズデイの娘ジョアンが去ってから2週間が経過。サーズデイ警部補はジョアンが去って、落ち込み、捜査にも身が入らない。 オックスフォードのラブレース・カレッジでは、ロシア人のユーリ・グラデンコ教授と人工知能のジェイソンのチェス対決が行われようとしていた。

そんな中、ラブレース・カレッジの人工知能のジェイソン開発チームの一員で、ひと月前から行方不明だったリチャード・ニールセンの遺体が発見される。 釣り好きのリチャード・ニールセンの死因は溺死。

さらに、プールが併設されたカウリー・バスの浴槽では年配の女性ポールフリーの溺死体が見つかる。 その後、カウリー・バスのプールでもエディソン・スモールズが溺死し、モースは一連の溺死に事件性があると疑う。

モースは巡査部長の昇進試験を受けていたが、答案用紙が紛失したと不合格になってしまう。答案用紙の紛失はモースが今までに敵に回した大物が仕組んだものだった。 モースはブライト警視正やサーズデイ警部補に異動をすすめられるが、モースはオックスフォードに残ることを決意する。

溺死したポールフリーとエディソン・スモールズの顔には石膏でデスマスクを取った痕跡が残っていた。

モースはオックスフォード・メール新聞の編集長ドロシア・フラジルからミステリー作家のケント・フィンを紹介される。 ケント・フィンは1880年代の溺死した女性の顔のスケッチを飾っていたことからモースに疑われるが、ケント・フィンには事件当時、記者のテッサやドロシアと寝ていたアリバイがあった。

モースはオックスフォード・メール新聞の記者テッサ・ナイトに捜査の手帳を盗まれ、3件の溺死は殺人の可能性があると大きく報じられてしまう。 上昇志向の強いテッサはさらなる特ダネをつかもうとし、カウリー・バスで襲われ、殺されてしまう。

モースはテッサからもらった情報でポールフリーがメイドとして働いていたというビンゼイにあるドクターの家をさがそうとする。 人工知能のジェイソンでビンゼイにあるASのつく名字を検索。 その結果から、ドクター・レイトン・アスベリーが浮上する。

ドクター・レイトン・アスベリーはすでに死亡していたが、生前は大戦で顔に大ケガした軍人たちを治療し、治療のため、石膏で顔のマスクを作っていた。

レイトン・アスベリーの家の水槽からは殺されたテッサの遺体が発見され、そこには殺されたポールフリーやエディソン、テッサたちのデスマスクも飾られていた。

ドクター・レイトン・アスベリーには、息子アレグザンダー、娘のペネロペがいたが、ペネロペはボートハウスで自殺していた。 ドロシア・フラジルは昔、その自殺を取材し、兄のアレグザンダーが妹のペネロペに異常な愛情を持っていたことをメイドのポールフリーから聞かされて記事にしていた。

人工知能ジェイソンの研究チームの一員であるクリフォード・ギブズ博士の父親がドクター・レイトン・アスベリーの患者だったことから、犯人だと疑われるが、クリフォード・ギブズ博士はシロ。 人工知能ジェイソンの研究チームの一員のブロデリック・キャッスルがドクター・レイトン・アスベリーの息子アレグザンダーだと判明する。

ブロデリック・キャッスル(アレグザンダー・レイトン・アスベリー)は妹のペネロペに異常な関心を抱き、それに恐怖した妹は自殺。 心を病んだブロデリック・キャッスルはペネロペの幻覚を見始め、人工知能のジェイソンを通して妹のペネロペが「彼らを殺して」と指示していると思い込んでいた。 デスマスクは妹に捧げるためだった。

心を病んでいることに気付かれ、チームから外されると思い、ブロデリック・キャッスルはリチャード・ニールセンを殺害。 リチャード・ニールセンが持っていた「司祭のあばずれ」と呼ばれるサーモン釣りに使うフライは、次に殺すポールフリーを指していた。

そして、ポールフリーの殺害現場の鏡に描かれたDENIALは「拒否」ではなく、スペルに弱いブロデリック・キャッスルがDANIELと書き間違えたもので、次の犠牲者エディソン・スモールズの愛称ダニエルを指していた。

エディソン・スモールズが見つかったプールのロッカーにあった封筒は「メール」を意味し、「オックスフォード・メール新聞」のことを指していた。

テッサのバッグが見つかったカウリー・バスのボイラー室の壁には「RXN CHECKMEAT チェック・ミート」の文字が。 モースはこれを見て、チェスの駒の名ルークがキャッスルとも呼ばれることに気付き、ブロデリック・キャッスルの正体がアレグザンダー・レイトン・アスベリーだと気付く。

ブロデリック・キャッスルはオックスフォード・メール新聞社からドロシアを連れ去り、妹のペネロペが自殺したボートハウスに車で向かっていた。 ドロシアは手を縛られたロープをほどき、ブロデリック・キャッスルの首を絞めると車は横転。

モースはボートハウスに逃げたブロデリック・キャッスルを追う。ブロデリック・キャッスルは妹と同じように自殺しようと川に飛び込むが、モースが引き上げる。

殺されたテッサのバッグからはモースの手帳が見つかるが、サーズデイはソファの後ろに落ちていたことにすればいいという。

どこかの山小屋ではタロットカードの占いで「吊るされた男」のカードが開かれていた。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case13「愛のコーダ」(愛の終止符)前回のあらすじと感想はこちら≫

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case14「死を呼ぶチェス」(「死のゲーム」)の感想

人工知能のジェイソンと人間のチェス対決が描かれた今回のエピソード。日本では将棋の電王戦がありますが、イギリスではチェスの対決が。 1960年代にも人工知能の開発は行われていたようです。

コンピュータチェス

コンピュータチェスは、 コンピュータが指す チェス のことである。 チャールズ・バベッジは、 1840年代に機械にゲームを行わせることに興味を持ち、 思考ルーチン (思考エンジン、解析エンジン等の名称もある)を考えた。ただし、チェスの場合は組合せが膨大になり現実的でないことに気づいている。 スペインの技術者 レオナルド・トーレス・ケベードは、 1912年に歴史上最初のコンピュータゲームと呼ばれるチェス機械、 エル・アヘドレシスタを作成した。

しかし、当時、最新の人工知能でも住所の検索で一晩中かかるとは。今なら1秒もかからずに結果が出るので、逆に驚きでしたね。

アルキメデスの砂の計算者からジャビール・イブン・アフラのトルクエタムまで考えるマシンを作ることを目指してきたという人類。 アルキメデスの砂の計算者とは、数学者アルキメデスの著作『砂の計算者』のことだそう。

砂粒を数えるもの

『 砂粒を数えるもの』(すなつぶをかぞえるもの)は、 アルキメデスの著作のひとつ。『 砂の計算者』などとも呼ばれる。アルキメデスの著作の中では内容が最も簡易的で、 宇宙に関する当時の知識を仮定して、宇宙を埋め尽くすのに必要な 砂粒の個数を概算したものである。

トルクエタムは、中世の天体機器で、ジャビール・イブン・アフラが初めて作ったと言われているものだそうです。

トルクエタム

トルクエタム( 英: Torquetum, Turquet)は、 中世の 天文学用機器であり、 地平座標、 赤道座標、 黄道座標という3種類の座標系の測定値の相互変換に用いられた。 アナログコンピュータ の一種とされることもある。

人工知能の対戦相手はロシア人のユーリ・グラデンコ教授。冷戦時代ということでソ連の国旗が。 モースがロシア語を少し話せることも明らかになりました。

ユーリ・グラデンコ教授が「世界を脅かすのはそれぞれの国に潜むそれぞれの政治思想です」と言っていたのも、冷戦時代を反映したセリフだった模様。

チェス対決は人工知能のジェイソンの勝利に。 ちゃんと挨拶もする人工知能のジェイソンは何だか人間らしさも感じさせましたね。

カラーテレビも当時は最新だったようで、ビリー・ジーン・キングが勝ったウィンブルドン選手権を見ていた模様。 当時の時代背景が描かれているのも興味深いですね。

ビリー・ジーン・キング

ビリー・ジーン・キング Billie Jean King 基本情報 国籍 出身地 同・ カリフォルニア州 ロングビーチ 生年月日 1943年 11月22日 (76歳) 身長 164cm 利き手 右 バックハンド 片手打ち ツアー経歴 デビュー年 1960年 引退年 1983年 生涯獲得賞金 1,966,487 アメリカ合衆国ドル 4大大会最高成績・シングルス 優勝回数 12(豪1・仏1・英6・米4) 4大大会最高成績・ダブルス 全英 優勝(1961・62・65・67・68・70-73・79) 優勝回数 16(仏1・英10・米5) 4大大会最高成績・混合ダブルス 優勝回数 11(豪1・仏2・英4・米4) 国別対抗戦最高成績 キャリア自己最高ランキング シングルス 1位 ダブルス 1位 ビリー・ジーン・キング( Billie Jean King, 1943年

女たらしのミステリー作家

ドロシアに紹介されたミステリー作家ケント・フィンは怪しさ満点でしたが、ただの女たらし…。 ドロシアだけでなく、テッサとまで関係していたケント・フィン。紳士とは程遠い男でしたね。

それにしても、1880年代に揚がった女性の水死体の顔のスケッチを飾っているというのは不気味でしたね。 しかも、女神とまで、あがめていたケント・フィン。ただの絵だと分かっていてもやはり気味が悪い…。

ケント・フィンが言っていた「イエローブック」とは19世紀の文芸誌のことだそう。

イエロー・ブック

1894年4月創刊。文芸部主任は アメリカの 作家 ヘンリー・ハーランド、絵画部主任は オーブリー・ビアズリー。第2号は 1894年7月、第3号は 1894年10月、第4号は 1895年1月に刊行された。寄稿者には マックス・ビアボーム、 アーノルド・ベネット、 フレデリック・ロルフ、 H・G・ウェルズ、 エドマンド・ゴス、 ヘンリー・ジェイムズ、 ジョージ・ギッシング、 W・B・イェイツ、 アーネスト・ダウソン、 アーサー・シモンズ、 アナトール・フランス、 ウォルター・シッカート などがいた。

犯人はブロデリック・キャッスルだった

事件の真犯人はブロデリック・キャッスル。人工知能のジェイソンの研究員の1人でした。 被害者全員がブロデリック・キャッスルとつながっていました。

最初の被害者リチャード・ニールセンは同じ人工知能のジェイソンの研究員。 殺人の動機は人工知能のジェイソンを通じて、死んだ妹のペネロペが命じたというのが、衝撃的。

自殺した妹のペネロペに異常な関心を持っていたというのも、ゾッとしますね。妹が死んでもなお、幻覚を見るほど執着していたブロデリック・キャッスル…。 しかも、妹が自殺したのもブロデリック・キャッスルの異常な愛に耐えられなくなったからでした。 事件の根底には近親相姦的な愛が…。

心を病んでいたブロデリック・キャッスルの本名はアレグザンダー・レイトン・アスベリー。 アレグザンダーの父親は外科医で戦争で顔を大ケガした軍人たちのマスクを作っていたようです。

研究員のギブズの父親の治療もし、天才だと言われる偉大な父親を持ったアレグザンダーでしたが、父親とは違い、妹への異常な愛を抱く変質者に…。

顔に大けがをした患者たちを怪物だと思っていたアレグザンダーでしたが、自分こそが怪物だということには気付いていなかった模様。 外見だけで判断し、自分の心の闇には目を向けなかったようです。

石膏で被害者のデスマスクまで作っていたアレグザンダー。 最初の被害者リチャード・ニールセンの持っていた釣りのフライの愛称「司祭のあばずれ」で次の標的ポールフリーを指す証拠を残していました。 それにしても、フライルアーに「司祭のあばずれ」なんて名前が付けられているなんて驚きですね。

メイドのポールフリーが自分の父親と不倫関係にあったことから「司祭のあばずれ」がメイドのポールフリーを指すものとして選ばれた模様。

ポールフリーの殺害現場には鏡にDENIALのメッセージが。「拒否」という意味かと思われましたが、次の犠牲者エディソン・スモールズの愛称ダニエル「DANIEL」でした。 エディソン・スモールズが狙われたのは、チェスを教えていたユースクラブで大ゲンカをしたから。自殺した妹のことで何か言われたようです。

エディソン・スモールズが死んだプールのロッカーの鍵をたどっていくと封筒が。それも、「オックスフォード・メール新聞」を指すメッセージでした。

しかも、ロッカーの番号「E4」「E5」「F4」は19世紀にはやったチェス対戦のオープニングの指し方キングズ・ギャンビット。

チェスボード

チェスボードとは、 チェスで使用される盤のこと。 将棋で使用される盤とは大きさが異なる。 チェス盤とも言う( 日本チェス協会など)。 駒 とチェス盤を合わせたものが、「チェスセット」と呼ばれている。 ...

チェスにくわしいトルーラブの知識が捜査に役立ちましたね。トルーラブをバカにしてきた研究員に対しても見事に反撃したのもさすが。 女性で美人だからとバカにするなんて最悪の人たちでしたが、ブライト警視正はトルーラブは才色兼備だと誇らしげなのがいいですね。

トルーラブはフランス語の翻訳やテッサのバッグがないことに気付くなど、捜査でも有能さを発揮。将来はいい刑事になりそうです。

編集長のドロシアまで狙われる

女性に弱いモースは捜査用の手帳をテッサに盗られてしまうことに。テッサがあんなにベタベタしてきたのは、モースの手帳を盗むためだったとは…。

上昇志向が強く、特ダネをつかみ、ロンドンへ行くことを目指していたテッサ。 ロンドンのフリート街は多くの新聞社の本社があり、イギリスの新聞社を指す言葉としても使われているそう。

映画にもなった『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』のフリート街も同じ場所だそうです。

特ダネを取るためには手段をいとわないテッサでしたが、殺されてしまうことに。 嫌な記者の典型のようなテッサでしたが、殺されてしまっては文句も言えませんね…。

テッサのバッグが見つかったボイラー室の壁には「RXN CHECKMEAT チェック・ミート」の文字が。 スペルに弱いアレグザンダーが「checkmate チェックメイト」と間違えたようです。

RXNはルークがナイトを取ったという意味。 ルークはお城のような形をしていることから「キャッスル」とも呼ばれるそう。 それで、モースはブロデリック・キャッスルの正体に気付くことに。

ルーク

ルーク (Rook、♖♜) はチェスの駒の一種。塔または城のような形をしている。城、戦車を表している。

次のターゲットの情報を残していくなんて、律儀な犯人でしたね。心のどこかでは止めてほしいと思っていたのでしょうか…。

妹の自殺記事を書いたドロシアまでターゲットに。 拉致されたドロシアは自力でロープをほどき、犯人のブロデリック・キャッスルの首を絞め、車は横転。 サーズデイが炎上する車から助け出してくれました。

テッサに続き、まさかドロシアまで殺されそうになるとは…。

モースは自殺しようと川に飛び込んだブロデリック・キャッスルを救助。 妹が自殺した場所で同じように溺死しようとするブロデリック・キャッスルの執着心がおぞましいですね。

モースの答案用紙が紛失

サーズデイもモースもジョアンが去って、寂しそう。 サーズデイは捜査にも身が入らないようで、モースとも言い合いに…。

銀行強盗のショックでジョアンが出ていってから連絡もないというのが心配ですね。 サーズデイの奥さんのウィンも、ジョアンの心配が尽きず、火曜日の定番のサンドウィッチの具も別の具にしてしまったようです。

コンサートで演奏された曲を聴きながらジョアンのことを思い出すモース。ガラスの楽器などめずらしい楽器で演奏されていた曲はサティのグノシエンヌという曲。

サティ:グノシエンヌ 第1番

Satie:Gnossiennes No.1

ジョアンを愛していることを自覚したモースでしたが、その直後にジョアンが去ってしまうことに。 「愛についてどう思う?」と監察医のマックス・デブリンに質問したり、モースはいつになく感傷的でしたね。

マックス・デブリンの答えが「愛と釣り どちらも同じ結果で逃げてしまうんだよ」というのが、また切ない…。

しかも、合格確実だと思われた巡査部長への昇進試験の結果はまさかの不合格!  モースの答案用紙だけ紛失するという あからさまな妨害行為が。

今までも証拠品がなくなったり、ブレナム・ベイル事件が封印されたりと、上層部などにモースのことを目障りに思う連中がいるようです…。 やり方が汚い。

モースをオックスフォードから追い出したい連中がいるようですが、モースはオックスフォードに居続けることを決意。 卑劣なやり方でモースの出世を妨害する人たちに負けないでほしいですね。

モースは刑事巡査として、カウリー署で捜査を続けることになりそう。 異動せずにすんだのはよかったですが、出世の道は険しそうですね。

最後には、どこかでタロットカード占いが行われていました。ジョアンと関係があるのでしょうか…。 出たカードは「吊るされた男」。

このカードは一体何を暗示しているのでしょう…。

吊された男

吊された男(つるされたおとこ、 英:The Hanged Man, 仏:Le Pendu)は、 タロットの 大アルカナに属するカードの1枚。 吊し人(つるしびと)、 吊られた男(つられたおとこ)、 死刑囚(しけいしゅう)、 刑死者 (けいししゃ)とも呼ばれる。 カード番号は「 12」。前のカード(11)は ウェイト版が「 正義」、 マルセイユ版が「 ...

今回のエピソードでは原作者のコリン・デクスターはドロシア・フラジルのオフィスに飾られた写真としてカメオ出演しています。

Case14「死を呼ぶチェス」で流れた曲

  • Gnossiene  - Erik Satie
  • White Rabbit - Jefferson Airplane

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』の登場人物・キャストについてはこちらへ>>

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