『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case12「禁断の森」(森の怪物)のあらすじと感想 ネタバレ注意!

※ネタバレしています。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』
Case12「禁断の森」(森の怪物)"Prey"

デンマークからの留学生イングリッド・ヒョルトが失踪。サーズデイ警部補はちょうど4年前に襲われ、昏睡状態となったサンドラ・ジョーダンとイングリッドが同じアップルハースト通りを通っていたことから、つながりを捜査する。

同じころ、川辺に遊びに来ていた若いリッキー・パーカーが行方不明となり、片腕だけが川岸で発見される。 さらに、近くの森ホワイトウッズではバードウォッチャーのモクセム博士もテントが切り裂かれ、行方不明に。 さらに、民家でも犬と羊が襲われる事件が発生。近くには貴族モートメーン家の屋敷クレヴコ・ホールが建っていた。

片腕だけが見つかったリッキーは肉食動物に襲われたことが分かる。 警察と地元住民は山狩りを開始。そのとき、襲われたローレンツ博士の遺体が発見される。

瀕死状態だったローレンツ博士はスペイン語で「マニータ」と言い残していた。「マニータ」は「妹」という意味でガイの妹ジョージーナを指していた。

モートメーン家のガイの妹ジョージーナは元子守りで、ローレンツ博士に恋をしていたが、相手にされず、ローレンツ博士は子守りのイングリッドと付き合っていた。

ジョージーナは過去にベンガルトラに襲われた過去があり、始末されたはずのそのトラがまだ生きていて、ローレンツ博士が研究に使っていることを知り、犯行を計画。 ジョージーナはローレンツ博士の研究所からトラの分泌物を盗み、ローレンツ博士のハンカチにかけ、トラに襲わせようとする。しかし、トラの世話係のゴギンズがカギをしっかりと閉めず、トラは檻から脱走。

公園の管理人のホッジズはイングリッドを車でホワイトウッドの森に連れ込み、襲おうとするが、イングリッドは逃げ出し、トラの分泌物がついたハンカチを持っていたイングリッドはトラに襲われてしまったのだった。 公園の管理人のホッジズはサンドラ・ジョーダン事件で証拠があがり、逮捕されるが、激怒したサーズデイ警部補が暴力を振るい問題になる。

逃げ出したトラは次々とリッキーやモクセム博士、ローレンツ博士と次々に人を襲っていた。 トラはついにモートメーン家の屋敷の迷路に入り込む。迷路の中にはジュリアと子どもが。 トラを仕留めようとした土地管理人 ジェフ・クレイヴェンも犠牲に。

モースは飛びかかろうとするトラからジュリアと子どもをかばおうとする。間一髪でブライト警視正がトラを撃ち殺し、モースたちは助かる。 ローレンツ博士を怖がらせて振り向かせたかっただけだというジョージーナは逮捕。 モースは巡査部長になるための申請を出していた。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case11「遠き理想郷」前回のあらすじと感想はこちら≫

Case12「禁断の森」(森の怪物)の感想

モンスターパニック映画のようなハラハラドキドキの展開が。まさか凶器がトラだったとは!

今回の主な事件関係者
  • イングリッド・ヒョルト デンマークからの留学生。ローレンツの家の子守。赤いコートを着て失踪。
  • ヘクター・ローレンツ博士 野生動物の研究者。
  • ガイ・モートメーン 貴族でクレヴコ・ホールという屋敷に住んでいる。ローレンツ博士の研究のスポンサー。
  • ジョージーナ・モートメーン ガイの妹。6年前、ブルータスというベンガルトラに襲われ、ケガを負う。
  • ジュリア・モートメーン ガイの妹。ハネムーンで夫が死んでしまう。子どもがいる。
  • ジェフ・クレイヴェン クレヴコ・ホールの土地管理人。
  • フィリップ・ハサウェイ クレヴコ・ホールの土地整備員。イングリッドと夜間学校で同じクラス。
  • ホッジズ 公園の管理人。4年前、サンドラを襲った犯人。
  • リッキー・パーカー 片腕だけが見つかった若い男性の犠牲者。
  • モクセム博士 黄色いテントで襲われた犠牲者。
  • ターンブル 夜間学校の校務員。剥製が趣味。
  • マーク・ブライデン 夜間学校の教師。

失踪したイングリッドやバードウオッチングをしていたモクセム博士の黄色いテントが印象的でしたね。 今回のエピソードは第三次中東戦争の始まった1967年6月5日にイングリッドが失踪した日からスタートしています。

第三次中東戦争 - Wikipedia

この戦争でイスラエルはほぼ一方的な勝利を収めたが、このためにアラブ側の戦争能力を軽視することとなり、 1973年の 第四次中東戦争の緒戦でアラブ側に敗北を喫することになったといわれている。戦争前に比べて国際的信用も低下し、かつての支援国 イギリス・ フランスからは兵器の共同開発や輸出を断られている。またヨルダン川西岸から周辺国(主にヨルダン)へ亡命した人々も多く、結果として ...

代わりに来た病理医は頼りにならず

4年前に襲われ、昏睡状態となったサンドラ・ジョーダンとイングリッド失踪事件の関連に気付くサーズデイ警部補。 娘のジョアンと同級生だったこともあり、事件解決に熱心に。

イングリッドが通っていた夜間学校の校務員ターンブルは不気味でしたね。干し首に動物の剥製が趣味。 事件には関係ありませんでしたが、干し首にはゾッとしました。

次々と襲われていく人たち。まさかトラだったとは!  モクセム博士の切り裂かれたテントで、てっきりクマに襲われたのかと…。

川に遊びに来ていたリッキーもトラの餌食に。川で泳いでいたキャシーが犠牲になったのかと思ったら、陸にいたリッキーが襲われていてびっくり。

釣りに行ったドクター・デブリンにかわってやってきたのはケンプという内務省病理医。 ちぎれた腕をちょっと見ただけで、溺死と断定。船のスクリューに巻き込まれたと結論を出してしまう信用できないケンプ…。

釣りから戻ったドクター・デブリンの検視で大型の肉食動物に襲われ、食いちぎられたことが判明。やっぱり監察医はドクター・デブリンでないといけませんね!  無能なケンプは「バカだな」と失礼な言葉を残して、去っていくのでした。こんな人が内務省病理医で大丈夫なのでしょうか…。

トラを退治した武勇伝を語るブライト警視正

トラは民家にも現れ、羊と犬も犠牲に。子どもが犠牲にならなくて本当に良かった。犬が守ってくれたのかもしれませんね。

インド時代の人喰いトラ マンイーターの話をするブライト警視正。マンイーターと言えば、Case10「光と影の奇想曲」(表と裏のバラッド)で、モースが射的で取ったぬいぐるみはトラでしたね。

インドで植民地の警官だったころの人喰いトラとの壮絶な戦いを語るブライト警視正。インドとネパールでは436人もの人を襲い、殺害したベンガルトラがおり、1907年にイギリス人のハンターであるジム・コルベットによって射殺されたそう。436人も! おそろしすぎて、言葉もないですね。

チャンパーワットの人食いトラ - Wikipedia

1907年に、このトラはイギリス人のハンターであるによって射殺された。トラはの町で16歳の少女を殺したときに、血痕と足跡を残していった。コルベットはその血の跡を追跡したのである。コルベットはトラを発見して射殺した。この大手柄は300人の住人によって確認された。トラの死骸を検分したところ、右側の牙が上下とも折れていて、上側は半分しかなく、下側は根本から失われていた。コルベットの推測によれば、こ...

トルーラブ巡査を気遣い、「万一の時は私のそばにおいで」と言ったり、トラの分泌物が盗まれたと突き止めたトルーラブ巡査をべた褒めするブライト警視正がなんだか奇妙…。娘や孫のように思っているのでしょうか…。

伯爵貴族の屋敷クレヴコを自然保護区にして、サファリパークにする計画を立てていたガイ。人工授精で、絶滅が近い種の繁殖させ、パークを開くというのはまるで『ジュラシック・パーク』みたいですね。

ハネムーンで夫が死んだガイの妹ジュリア。「モートメーン家は呪われてる、真実の懺悔なしに許しはない、私の何かがきっと腐ってる」と意味深なことを言っていましたが、事件には関係ありませんでしたね。

暴力を振るうサーズデイ警部補

イングリッドを車に乗せ、襲おうとしたことから、4年前、サンドラを襲ったホッジズが浮かび上がることに。 公園の管理人であるホッジズ。帽子などまるで警官のような格好をしていましたが、極悪なレイプ犯でした。

家宅捜索でホッジズの家からサンドラの下着やロープが見つかり、証拠は固まっていたのに、取り調べでホッジズを殴りつけるサーズデイ警部補。 ひどくせきこんでいるし、心配ですね。

ホッジズは転んだことにすると言い、警察手帳を戻すブライト警視正。サーズデイ警部補は必要のないときには暴力を振るうタイプではなかったはず。よほど、ブレナムベイルの事件がこたえたようですね。健康状態と精神状態が心配になりますね。

迷路でトラに襲われそうになるモース

6年前、ガイの妹ジョージーナを襲い、始末されたはずのトラが生きていたことが判明。 しかも、狭い檻で管理もずさん。 トラの世話係ゴギンズもトラの餌食に…。襲われてトラのエサになるなんて、恐怖!

トラの分泌物を盗んだのがジョージーナだと気付いたローレンツ博士も犠牲に。 ダイイング・メッセージは「マンイーター」ではなく、妹という意味のスペイン語の「マニータ」。 ジョージーナのローレンツ博士への復讐心や恋心が、関係のない大勢の人を犠牲にすることに…。

トラに襲われる恐怖を誰よりも知っていたはずなのに、ローレンツ博士を同じ目に遭わせて怖がらせて、振り向かせようとしたジョージーナ…。 そのために多くの命が犠牲になってしまうのでした。 逃がしたトラの世話係ゴギンズや勝手にトラを飼っていたモートメーン家にも責任がありそう。

トラを呼び戻すため分泌物を染み込ませた布を結んでいたのはジョージーナの赤い毛糸。 屋敷の庭にも布を下げていたせいで、トラは迷路の中に!

巨大な迷路園の中にトラが入り込むなんてまさに悪夢。 しかも、中には子どもも!

ハラハラドキドキの展開。サーズデイ警部補はたいまつでトラを追い払ってガイを助けましたが、土地管理人クレイヴェンはトラの犠牲に。

土地管理人クレイヴェンには口だけだと言われていたブライト警視正でしたが、最後に決めてくれました!  間一髪でトラを撃ち殺したブライト警視正。さすがトラ退治の経験者。見直しました!

襲われそうだったモースのショックぶりもリアル。とにかく無事でよかったですね。 英題の"Prey"は「餌食やエサ、犠牲者」という意味です。

ストレンジは巡査部長に

ジェイクスの代わりに刑事巡査部長に昇格したストレンジ。モースの直属の上司になったということで、モースはやりにくそう。ストレンジは刑事巡査部長になったばかりですが、貫禄がすごいですね。警官の制服を脱いだ途端、ベテラン刑事の風格が!

モースに引っ越し祝いとしてドヴォルザークのレコードを持ってくるストレンジ。モースと違って音楽には詳しくないようですね。最新のクラシックって…。矛盾してますね。

男の会をやろうとパブへ。ストレンジが頼んだビール「ダブルダイヤモンド」は英国王室御用達のビールなんだそう。モースが驚いていたのは高級志向のビールだったからのようですね。 昇格ですっかり変わってしまったように見えるストレンジでしたが、変わらないし、モースとも友達だと念を押すストレンジ。

モースと違って、ストレンジは警察内の政治的駆け引きに向いていそうですね。 モースも触発されて、まずは巡査部長を目指すことにしたようです。

モースは警部の器だというサーズデイ警部補。のちにオリジナルの『主任警部モース』で「モース警部」となる姿が見えるようですね。ちなみに、ストレンジは警視正となり、警部であるモースの上司になっています。

  • 警視監(警察本部長)Chief Constable
  • 警視監補(副本部長)Deputy Chief Constable
  • 警視長 Assistant Chief Constable
  • 警視正 Chief Superintendent
    ブライト
  • 警視 Detective Superintendent
  • 警部 Detective Chief Inspector
  • 警部補 Detective Inspector
    サーズデイ
  • 巡査部長 Detective Sergeant
    ジェイクス ストレンジ
  • 刑事巡査 Detective Constable
    モース
  • 巡査 Police Constable
    ストレンジ トルーラブ

サーズデイ警部補の息子サムは陸軍に入隊することに。お父さんと同じように警官にはならないんですね。サーズデイ警部補の妻と娘のジョアンはおばさんの介護で留守に。息子のサムが朝食(焦がしていたけど…)やランチのサンドウィッチまで作っているのが、やさしいですね。いい息子さん…。

奥さんたちが戻る前に、飲みに繰り出すサーズデイ警部補とモース。神が6日間で世界を作った聖書の天地創造を引用し、「7日目 神は休まれた」と続けるのがモースらしいですね。

天地創造 - Wikipedia

1654年に、 英国国教会の アイルランド 大主教 ジェームズ・アッシャーと ケンブリッジ大学副総長が聖書の記述から逆算し、天地創造は 西暦 の紀元前4004年10月18日〜24日にかけて起こり、アダム創造は紀元前4004年10月23日午前9時と算出し、長らくキリスト教圏ではこの年代が信じられてきた(旧約聖書のモーセ五書に登場する族長全員の寿命を加算して算出したもの)。 その他にも天地創造の年代には諸説ある。

Case12「禁断の森」(森の怪物)で流れた曲

  • Mass in B minor, BWV 232: Agnus Dei - バッハ
  • Slavonic Dances Dance No. 10 - ドヴォルザーク
  • Andmoreagain - LOVE
  • Starke Stücke: Wolfgang Amadeus Mozart Don Giovanni, Kapitel 10 - モーツァルト
  • Going Home - JAMES LAST AND HIS ORCHESTRA
  • 6 Gnossiennes, for Piano: No. 3 in A Minor, Lent - サティ
  • Slavonic Dance No. 2, Op. 72 - ドヴォルザーク

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