『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case11「遠き理想郷」のあらすじと感想 ネタバレ注意!

※ネタバレしています。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』
Case11「遠き理想郷」"Arcadia"のあらすじ

部屋が爆発し、若い芸術家サイモン・ハルワードが死亡する。「リチャードソンズ」というスーパーでは毒物の混入事件で女性が死亡。 さらに同じスーパーのベビーフードにもガラスが混入し、あやうく赤ちゃんが犠牲になりそうに。 スーパーの「リチャードソンズ」には多数の脅迫状が届いていたが、通報せず、無視していたのだった。

事件はエスカレートし、リチャードソンズの経営者の娘ヴェリティが誘拐される。電話で誘拐犯の指示通りに動くモースだったが殴られ、身代金を奪われてしまう。 警察犬で追うと、古い鉱山トンネルに監禁されていたヴェリティ。近くには時限爆弾が。

しかし、誘拐はヴェリティの狂言で両親への復讐だった。爆弾も遠隔操作でアイーシャが操作していた。

公民権運動のアムノックスのボランティア活動でローデシアに行ったヴェリティはカスバート・マカンバと恋に落ち、妊娠。それを知った両親は無理やり中絶させたのだった。

中絶した病院で出会ったヴェリティとアイーシャ。アイーシャはコミューンのリーダー ギデオン・フィンに弄ばれ、15歳で妊娠していた。 ヴェリティとアイーシャ、サイモン・ハルワードはスーパーの「リチャードソンズ」に異物を混入し、脅迫。 しかし、サイモン・ハルワードはヒ素を大量に混入し、死亡者が。ベビーフードにまでガラスを混入し始め、暴走。やり過ぎたサイモン・ハルワードの部屋にアイーシャが自家製時限爆弾を作って殺していた。

誘拐の電話は死ぬ前にサイモン・ハルワードの声を録音したものだった。

ヴェリティは病院から抜け出し、アイーシャのいるコミューンへ。アイーシャは赤ちゃんを誘拐。 追い詰められたアイーシャとヴェリティは2人で自殺しようとしていた。 アイーシャは毒を飲み、死んでしまい、ヴェリティは逮捕される。

ジェイクスは子どもができ、結婚することに。警察を辞め、アメリカの牧場で働くというジェイクス。 モースは子どものためにくじ付き国債を送るのだった。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case10「光と影の奇想曲」前回のあらすじと感想はこちら≫

Case11「遠き理想郷」の感想

当時の世界情勢が絡められていた今回の事件。ローデシアは現在のジンバブエ。イギリスの植民地だったこともあり、1960年代には白人による黒人の人種隔離政策(アパルトヘイト)が行われ、国際的非難を浴びていました。

オックスフォード大学の学生がローデシア出身のカスバートを捕まえて、川に投げ込むなんてひどいですね。 何もしてないのに…。ブライト警視正も憤慨。罰が今学期、外出禁止だけなのは、甘すぎる気が…。

今回の主な事件関係者
  • レオ・リチャードソン スーパー「リチャードソンズ」の経営者。飲酒運転で捕まる。
  • アネット・リチャードソン レオの妻。モースを誘惑。
  • ヴェリティ・リチャードソン レオとアネットの娘。狂言誘拐を計画。
  • アイヴォア・マドックス スーパーの「リチャードソンズ」のマネージャー。
  • マイク・マドックス アイヴォアの息子。スーパーで働く。
  • サイモン・ハルワード 画家。異物混入事件の犯人で、コミューンにいた。爆発で殺される。
  • アイーシャ(テルマ・アン・デーヴィス:TAD)ヴェリティと協力し、狂言誘拐を計画。
  • ギデオン・フィン コミューンのリーダー。アイーシャを妊娠させ、中絶させる。
  • カスバート・マカンバ ローデシア出身。ヴェリティと恋人だった。

スーパーで毒物混入事件が

胃腸炎が大流行しているようで、スーパーの毒物混入で死んだ女性も最初は胃腸炎かと思われていましたが、死亡。 ハエ取り紙のヒ素が混入されていました。 スーパーの中で、すでに気分が悪そうだった女性。店の中で食べていたのでしょうか…。

それにしても、ハエ取り紙に人が殺せるヒ素が染み込ませてあったなんて怖いですね。 リンゴを煮たベビーフードにはガラスが。赤ちゃんが口にしていなくてよかった!

人を傷つける異物を混入していたのは、画家のサイモン・ハルワード。ベビーフードにガラスの破片を混入するなんて…。 ニシンのペーストにも毒が混入されていると気付き、サンドイッチを食べるサーズデイ警部補を止めるモース。 ニシンのペーストをサンドウィッチに塗るのも意外でしたが、生臭そう…。

トルーラブ巡査が初登場

スーパーの「リチャードソンズ」を脅しているのは3人組。 サイモン・ハルワードに、ヴェリティ、アイーシャ。 サイモン・ハルワードの部屋とヴェリティの部屋には同じアムノックスのポスターが。

やり過ぎたサイモン・ハルワードは爆発で殺されることに。 爆発に使われたのは、自動で紅茶を入れることができる目覚まし時計のようです。 ゴブリン社のティーメイズという商品で、タイマーをセットしておくと起きてすぐ紅茶を楽しめるんだそう。 紅茶好きのイギリスらしい商品ですね。

Teasmade - Wikipedia

A teasmade is a machine for making tea automatically. It was once common in the United Kingdom and some British Commonwealth countries. Teasmades generally include an analogue alarm clock and are designed to be used at the bedside, to ensure tea is ready first thing in the morning.

お湯を沸かす装置に薬品を入れて爆発させたアイーシャ。 モースの推理は当たっていましたが、実験は失敗。爆発すると分かっていて、あんなに近くにいて大丈夫なのかと不安だったので、逆に失敗してよかったのかもしれませんね。

失敗した原因は部屋の中で行わなかったから。蒸気が充満すれば大爆発に。 それに気付いたのは有能な新人警官トルーラブ巡査。今回、初登場。

トルーラブ巡査にブライト警視正は「任務は楽しくやろうが信条。困ったときはドアは半分は開いてるからね」と声掛け。 ブライト警視正は、一体何だったんだろうとあっけにとられるような態度でびっくり。かわいい女性警察官が来てうれしかったのしょうか。 どっか悪いんじゃないのかとからかわれ、そっけなかったジェイクスとは対照的でしたね。

ジェイクスがいなくなり、これからはトルーラブ巡査が活躍しそうです。

共犯のアイーシャとヴェリティ

サイモン・ハルワードがいたというコミューンを見たサーズデイ警部補は「ケツを蹴っ飛ばしてやりたかった」とおかんむり。サーズデイ警部補の人を見る目は確かでした!

コミューンのギデオン・フィンはとんでもない男。若い女の子を食い物にして、妊娠したら中絶させるというクズでした。 アイーシャとヴェリティが出会ったのが、中絶した病院だというのが悲しいですね。

アイーシャが妊娠したのはまだ15歳のとき。以前にも15歳の少女に手を出していたギデオン。少女を弄ぶ とんだロリコンでしたね。 捕まらずに消えたのが許せない。

ヴェリティはローデシアで出会ったカスバートの子を妊娠。両親に中絶を強制されたのでした。 ドクター・アムソアに金を積んで、自傷行為の恐れがあると診断させ、中絶を可能に。 娘のためと言って、そんなひどいことをするなんて…。

モースが言うように、決めるのはヴェリティ自身だったのに。家名や世間体ばかり気にする両親…。 両親に復讐したくなるのも無理ないですね。

ヴェリティの母親アネットに誘惑されるモース。またしても人妻に誘惑されてる!

今回はどぎまぎしながらも、きっぱりと拒否。 女性を惹きつける何かがあるのでしょうか…。しかし、真剣な付き合いには、縁のないモース。新聞記者のドロレスには、「しょぼくれてるわよ」と言われる始末…。

ヴェリティ誘拐

「サイモン・ハルワードと寝たんですか?」と率直に聞き、アネットにビンタされるモース。誘拐犯の指示で走ったりと、大変な目に。

モースは結婚するジェイクスのため、身代金受け渡しという危険な役目に立候補。珍しく全力疾走するモース! 

身代金を入れたカバンには、警察犬が追えるようにアニスのお菓子をつけておいたモース。ただ甘いお菓子を食べていただけじゃなかったんですね。さすがモースですね。

アニス | スパイスを知る | スパイスオブライフ

スパイス大辞典のアニス詳細ページです。

元チョーク鉱山のトンネルに監禁されていたヴェリティ。トンネルが爆発し、結婚すると言っていたジェイクスが死んでしまったかと不安に。結婚するなんて言うから、死亡フラグかと…。 無事でよかった!

看護師としてモースと付き合っていたモニカも登場。

誘拐犯の電話の声は録音だと気付いたモース。録音には鐘の音も。どこの教会の鐘か聞き分けられるのがすごいですね。「わずかにGフラット」だというモース。凡人には分かりません…。鐘の音はコミューン近くの教会のものでした。ヴェリティ誘拐は狂言だと見抜いたモース。

ヴェリティとアイーシャは追い詰められ、自殺のため鎮静剤やヒ素を飲もうと計画。1人で毒を飲んだアイーシャは死んでしまいました。 「何が理想郷よ。地獄じゃない!」と叫ぶアイーシャ。それなのにまだ、理想郷、夢を語るギデオン…。 ギデオンにとっては理想郷でも、アイーシャにとっては地獄。

英題のArcadia アルカディアはギリシャの地名でもあり、理想郷を指す言葉。理想郷には程遠いコミューンでしたね。

アルカディア - Wikipedia

アルカディア( 古代ギリシア語: Ἀρκαδία / Arcadia, Arkadia)は、 ギリシャの ペロポネソス半島中央部にある古代からの地域名で、後世に牧人の楽園として伝承され、 理想郷の代名詞となった。名称は ギリシア神話に登場する アルカス(アルカディア人の祖)に由来する。英語風にアルケイディア、アーカディア、アーケイディア等と表記される場合もある。 ラテン文字 による綴りには「Arcadia」と「Arkadia」の2種が混在している(詳細については後述)。

クエーカー教徒だった母親を思い出すモース

スーパーの創業者がクエーカー教徒だったこともあり、母親のことを思い出すモース。 母親と子どもの頃のモースのツーショット写真も登場。 クエーカー教徒のお祈りも独特のもののようですね。

クエーカー - Wikipedia

クエーカー( Quaker)は、 キリスト教 プロテスタントの一派である キリスト友会(キリストゆうかい、 Religious Society of Friends, フレンド派とも)に対する一般的な呼称である。友会は、 17世紀に イングランドで設立された宗教団体である。 ピューリタン革命の中で発生した宗派で、教会の制度化・儀式化に反対し、霊的体験を重んじる。この派の人びとが神秘体験にあって身を震わせる(quake)ことからクエーカー(震える人)と俗称されるようになった。会員自身はこの言葉を使わずに 友会徒( Friends)と自称している。クエーカーという名称は、創始者 ジョージ・フォックス に対して判事が使った言葉に由来する。

クエーカーは平和主義で戦争や暴力は誤りであるという信念が貫かれているそう。共同創業者のマドックスとリチャードソンが対立したのも、平和主義の信念が原因。 マネージャー マドックスの「普通がいいです。真ん中ぐらいが。中道を行け。よく言うでしょう」は恨みを持たず、平和主義的なのかもしれませんね。

子どもの頃は、嫌々母親とクエーカーの教会に来ていたと言うモース。心を静めることが今もできないというのが、母親を失った深い悲しみを思わせるようでつらいですね。

ジェイクスは結婚することになり、アメリカへ

ジェイクスは子どもができ、結婚することに。まさかの急展開!

モースに報告する姿がうれしそうですね。普段はすました態度のジェイクスがデレデレして照れてる!  しかも、警察を辞めて、アメリカに。以前、ジェイクスとデートしたことのあるジョアンも驚き。

「愛ってすごい。運命の出会いってやつね」と言うジョアン。 虐待の過去が明らかになったジェイクスでしたが、幸せになれてよかったですね。ジョアンとモースはお似合いだと思うのですが、付き合うことはないのでしょうか…。

モースの引っ越しも手伝ってくれたジェイクス。ピーターと呼ぶようになり、次第に打ち解けてきたモースとジェイクスでしたが、別れの時が。 ジェイクスの婚約者お披露目の会には寄らずに、最後にジェイクスと握手を交わすモース。

ジェイクスの奥さんの名前は「ホープ」! まさにジェイクスにとって「希望」だったわけですね。 去っていくモースの後ろ姿を心配そうに見ているジェイクス。幸せの道をつかんだジェイクスでしたが、モースが幸せを見つけられる日は遠そうです…。

ジェイクスの子どもにくじ付き国債を贈るモース。 イギリスには宝くじのついた国債があるんですね。 プレミアムボンドと呼ばれ、1956年から始まったそうです。

モースが最後に引用した「世界が目の前にあった 安息の地としての世界 導くのは神  2人は互いに手を取り合い ゆるりとエデンを通り 2人だけの道を進む」はイギリスの詩人ミルトンの『失楽園』から。

“The world was all before them, where to choose Their place of rest, and Providence their guide: They hand in hand, with wandering steps and slow, Through Eden took their solitary way.”

最後に降ってきた雨も、ジェイクスの新たな門出を祝うような爽やかな雨でしたね。

原作者のコリン・デクスターは1時間14分30秒ごろ、モースがカスバートに事情を聞いているとき、そばのベンチで女性としゃべっている人物としてカメオ出演しています。

Case11「遠き理想郷」で流れた曲

  • La wally (From "Diva") [feat. London Philharmonic Orchestra] - VLADIMIR COSMA & WILHELMENIA FERNANDEZ
  • For What It's Worth - BUFFALO SPRINGFIELD
  • Misirlou - MARTIN DENNY
  • Nocturne, Cis-Moll, Op. 27, No. 1: Larghetto - ADOLF DRESCHER

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