『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case15「汚れなき歌声」(「嫉妬の賛美歌」) あらすじと感想・曲 ネタバレ注意!

※ネタバレしています。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』
Case15「汚れなき歌声」(「嫉妬の賛美歌」)"Canticle"のあらすじ

最近のテレビ番組や曲が嫌らしいと批判するテレビ浄化委員会のリーダー ミセス・ペティボンに脅迫状が届く。モースはミセス・ペティボンの警護につくことに。

ミセス・ペティボンが批判する人気のロックバンド「ワイルドウッド」もオックスフォードに来ていた。 そんな中、「ワイルドウッド」が滞在するメイプルウィック・ホールで働いていたレンガ職人バリー・フィンチの死体がパブの裏で発見される。

ミセス・ペティボンと「ワイルドウッド」はテレビ番組「アルマナック」に出演。 番組で「ワイルドウッド」は新曲の「ジェニファー・サムタイムズ」を演奏し、ミセス・ペティボンは同性愛も批判する。

その後、ミセス・ペティボンの支援者から届いたチョコレートを食べたゴーライトリー牧師が死亡。 チョコレートに下剤が仕込まれており、腎臓が悪かったゴーライトリー牧師は低マグネシウム血症を起こし、大動脈瘤が破裂していた。

ゲイ雑誌の「エキサイティング・タイムズ」をミセス・ペティボンに潰されて憎んでいたダッドリー・ジェソップがチョコレートに毒を盛ったと疑われるが、シロ。

切手の裏に残っていた指紋で、脅迫状はミセス・ペティボンの自作自演で、支援者を増やすためだと判明。 ミセス・ペティボンの夫は同性愛者で自殺していた。 母親のミセス・ペティボンにずっと抑圧されていた娘のベティーナは母親のもとを去る決意をする。

バリーの遺体の脇腹にはクロスレンチの跡が残っていた。「ワイルドウッド」が滞在するメイプルウィック・ホールで死んだバリーをマネージャーのラルフ・スペンダーが車でパブの裏に運んだとモースは推理。 そんな中、「ワイルドウッド」のボーカルのニックが行方不明に。見つかったニックは大量の幻覚剤LSDを盛られ、正気を失っていた。

ニックの書斎の缶の中にはニックと死んだバリーとピッパのパーティーのときの写真が。 その写真を撮ったのはエマだった。

エマはピッパと共にバンドのステージ衣装を担当し、ニックを愛していた。 ニックと死んだバリーとピッパの関係は新しいアルバムのタイトル「ボーイズ&ガールズ・カム アウト・トゥ・プレイ」「男女で遊ぼう」にもなっていた。

さらにレコードに刻まれた「YEMKTTHL 4099」というメッセージは「イエット・イーチマン・キルズ・ザ・シングズ・ヒーラブズ Yet each man kills the thing he loves(人は愛人を殺す)」というオスカー・ワイルドの言葉と同性愛の罪で投獄されたオスカー・ワイルドの囚人番号「4099」を組み合わせたものだった。

エマはニックとバリーが寝るのが耐えられず、バリーの首を絞めていたが、バリーはドラッグですでに死ぬ運命だった。

酒とドラッグで朦朧としていたニックはマルキ・ド・サドの小説「ジュスティーヌ」に出てくるプレイでバリーを死なせてしまったと思っていた。そのため、マネージャーのラルフ・スペンダーは事件を握りつぶそうと、車でバリーの死体をパブの裏に運んだのだった。

その後、バリーが死んでもニックはエマのものにならず、エマはニックに大量のLSDを盛っていた。

エマはニックが書いた新曲の「ジェニファー・サムタイムズ」も自分のエマ・ジェニファー・ダーブリー・カーという名前からで自分のことが歌われていると思っていたが、実は「ジェニファー」は「クリストファー」のこと。

「クリストファー」はニックの親友で同じ学校に通っていた「ワイルドウッド」のベースのクリストファーのことだった。 ゲイを疑われることを避けるため、「クリストファー」と響きが似た「ジェニファー」に変えていた。

モースはレモネードに毒を盛られ、幻覚に苦しむ中、エマにナイフで刺されそうになる。 モースに盛られた毒はLSDではなく、ヒヨス、マンドレーク、チョウセンアサガオで無事にモースは回復する。

エマはバンドの曲を流すなと訴えていたミセス・ペティボンのチョコレートにも下剤を盛っていた。 大量のLSDを盛られたニックの心の回復は難しく、ワイルドウッドは解散に。

モースはジョアンからと思われるレミントンからコレクトコールを受けるが、無言のままだった。

どこかの山小屋ではタロットカードの占いで「恋人」のカードが開かれていた。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case14「死を呼ぶチェス」(「死のゲーム」)前回のあらすじと感想はこちら≫

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case15「汚れなき歌声」の感想

脅迫状は自作自演だった

信仰心を持ち、モラルを説くミセス・ペティボン。 「テレビ浄化委員会」という団体名からして、自分たち以外の価値観は認めないといった感じ。

最近のテレビ番組や曲を非難するだけではなく、同性愛者まで差別し、断罪するミセス・ペティボンでしたが、脅迫状を送ったのは自分自身。 人にモラルを説いていたのに、支援者を集めるために自作自演をしていたなんて、お笑い種。独りよがりなモラルを人に押し付けておきながら、自分はそのモラルに反することまでしていたとは、とんだ偽善者ですね。

同性愛者を憎むのも、夫がゲイだったからでした。 夫は同性愛者として逮捕され、ミセス・ペティボンは夫を自殺へと追い込んだようです…。

聖書では同性愛は「ソドム」と言われ、「ソドミー法」という同性愛を取り締まる法律もあったそう。 イングランドとウエールズでは1967年に男性同士の同性愛行為が合法化されたそう。 今回のエピソードの舞台は1967年ということで、合法化されたばかりだったころが描かれているようです。 ミセス・ペティボンのような差別的な人も多かったようですね。

ミセス・ペティボンはダッドリー・ジェソップのゲイ雑誌も潰していました。 ジェソップの「ゴミババア」という罵声が印象的。ペティボンをヘッダ・ホッパーみたいなメガネをしているとも批判していたジェソップ。 ヘッダ・ホッパーはアメリカの女優で、ゴシップ・コラムニストに転身した人だそう。

ヘッダ・ホッパー

ヘッダ・ホッパー(Hedda Hopper、1885年5月2日 - 1966年2月1日)は、アメリカ合衆国の女優、ゴシップ・コラムニスト

ジェソップは雑誌に「キリストとペテロが恋人だった」と書き、ミセス・ペティボンを怒らせていました。 ペテロは漁師だったイエス・キリストの最初の弟子。キリスト教徒にとっては、許せない話だったようです。

娘のベティーナの男関係にも厳しいミセス・ペティボン。 ベティーナに誘われて部屋でお酒を飲んでしまったモースは牧師が殺された捜査から外されることに。

さすがに勤務時間中に、お酒を飲んでしまったのはマズイですね…。 頭をはっきりさせておきたいとマリファナはやらないモースでしたが、ビールは頭の栄養だと言い訳していたモース。すっかりお酒好きになっていますね。

『主任警部モース』で捜査中でもビールを飲む姿が重なります。 ワーグナー好きなのも、『主任警部モース』につながりますね。

モースは娘のベティーナにいきなり「愛してる」と告白され、困惑。 愛の告白にはびっくりしました。

でも、ベティーナはモースを愛しているというより、母親のもとから連れ去ってくれる誰かが欲しかっただけのよう。 最後はひとりで母親のミセス・ペティボンのもとを去ることができたベティーナ。ようやくベティーナが毒親から解放されてよかったですね。

ミセス・ペティボンは娘が戻ってくると信じたいようでしたが、サーズデイは戻ってこないと断言。娘のジョアンが去っていたことが重なったようです…。

ジョアンから一切連絡がなく、怒るサーズデイ。 ジョアンも電話ぐらいしてあげてもいいのに…。いい両親に心配をかけすぎですね。

犯人はエマ

人気のロックバンド「ワイルドウッド」の滞在する屋敷で働いていたレンガ職人バリーの死体がパブの裏で発見。 バリーの首を絞めたのはエマでしたが、バリーはドラッグですでに死んでいたのでした。

ヒッピー文化やビートルズをモデルにしたらしい「ワイルドウッド」。

モースは流行りには うといようで、トルーラブが詳しくて助かりましたね。「キンクス」が労働許可の関係でアメリカに行けないことも知っていたトルーラブ。 「キンクス」は実在する1964年に結成されたイギリスのロックバンドです。

キンクス

ザ・キンクス ( The Kinks) は、 イギリスの ロック バンド。1964年に、 ロンドン北部の マスウェル・ヒルで レイと デイヴのデイヴィス兄弟によって結成された。 アメリカ合衆国では ブリティッシュ・インヴェイジョンのグループの一つとして分類され、当時のロック界に対して重要な影響を与えたバンドとして見なされる。彼らの音楽は幅広いジャンルの音楽に影響を与え、その中には ...

ボーカルのニックを愛し、自分のものにしたかったエマ。 ニックが男と寝ていることがどうしても許せなかったようです。ニックが寝ていたピッパを殺そうとはしなかったことから、エマも同性愛を嫌悪していたようです。

バリーはエマに殺されなくてもドラッグで死ぬ運命に。 しかし、ニックは自分がバリーを死なせてしまったと思っていました。だから、マネージャーも、バンドのメンバーもニックをかばおうとしていたんですね。

ニックがバリーを死なせてしまったと思ったのは、マルキ・ド・サドの小説「ジュスティーヌ」に登場する首を絞めるシーンをバリーにもしたから。 マルキ・ド・サドの名前は「サディスト」の語源になったそう。

ピッパが朗読していた本はマルキ・ド・サドの小説「ジュスティーヌ」。 それが伏線になっていたんですね。

ニックの奔放な性生活もヒッピー文化の1つだったよう。 ドクター・バクシによる瞑想や、インテリアもヒッピーっぽい雰囲気が。

「ワイルドウッド」のレコードには、「YEMKTTHL 4099」というメッセージが隠されていました。

YEMKTTHL」は「イエット・イーチマン・キルズ・ザ・シングズ・ヒー・ラブズ Yet each man kills the thing he loves」の頭文字。 「The Ballad of Reading Gaol」というオスカー・ワイルドの詩の一説で、獄中で書かれたものだそう。

4099」は男色の罪で投獄されたオスカー・ワイルドの囚人番号でした。

隠されていたのは同性愛。

ニックが作詞した曲「ジェニファー・サムタイムズ」もエマのことではなく、バンドのメンバーのクリストファーのことでした。 エマが自分のことを歌っていると思い込んでいたとは、哀れ…。

「昔 学校でキノコの下をのぞいた」はクリストファーのこと。キノコはやっぱり男性のシンボルのことを指しているのでしょうか…。

「ジェニファー・サムタイムズ」を口ずさみながら、チョコを食べて死んでしまったゴーライトリー牧師。 批判する立場にいながらも歌ってしまうほど、キャッチーで、気に入ってしまったようです。

マリファナやキノコをやっていたニック。ドラッグのキノコと言えば、マジックマッシュルーム。「キノコは食べるものです」と断言したモースは正しい!

ちなみにニックがモースに進めていたハクスリーとは 『知覚の扉』(The doors of perception)などの小説で知られるオルダル・ハクスリーのことのようです。

『知覚の扉』では幻覚剤による実体験を書き、死の床ではLSDを注射してもらい、亡くなったそうです。ニックがLSDを盛られることを暗示していた模様。

オルダス・ハクスリー

オルダス・レナード・ハクスリー(Aldous Leonard Huxley , 1894年 7月26日 - 1963年 11月22日)は、 イギリスの著作家。後に アメリカ合衆国に移住した。

クリストファーは今はアンナ・ブリットと結婚。昔は、ニックと付き合っていたようです。

エマはニックにまで大量のLSDを盛り、正気を失わせてしまいました。真っ暗な中、聞こえてくる笛の音が怖かったですね。 ニックは殺されはしなかったものの、精神的には殺されたも同然の状態に…。 心の回復は難しいなんて、やはりドラッグはおそろしいですね。

モースもエマに薬を盛られてしまいましたが、LSDではなく、ヒヨス、マンドレーク、チョウセンアサガオの混ぜ物でした。

ヒヨス

ヒヨスは、 マンドレイク、 ベラドンナ、 チョウセンアサガオ等の植物と組み合わせて、その 向精神作用を利用して 麻酔薬として歴史的に用いられてきた。

マンドレイク

マンドレイク 分類 英名 European Mandrake 種 Mandragora officinarum (Linneus) Mandragora autumnalis Spreng Mandragora caulescens Clarke マンドレイク(Mandrake)、別名 マンドラゴラ(Mandragora)は、 ナス科 マンドラゴラ属の植物。茎はなく、 釣鐘 状の花弁と赤い果実をつける。 古くから 薬草として用いられたが、 魔術や 錬金術の原料として登場する。 根茎が幾枝にも分かれ、 個体によっては人型に似る。 幻覚、 幻聴を伴い時には死に至る 神経毒 が根に含まれる。 人のように動き、引き抜くと悲鳴を上げて、まともに聞いた人間は 発狂して死んでしまうという 伝説がある。

チョウセンアサガオ

チョウセンアサガオ 分類 学名 Datura metel L.

ヒヨスやマンドレーク、チョウセンアサガオは組み合わせて麻酔薬としても使われ、幻覚や浮遊感を引き起こすそう。 まさかレモネードに薬が混ぜられていたとは…。あやうく刺されて殺されそうに!

薬を盛られたモースはもう一人の自分の幻覚をみることに。おびえていたモースの様子を見ると他にもおそろしい幻覚を見てしまったようですね。

モースは無事に回復して、一安心。 エマは牧師の食べたチョコにも下剤を盛ったことを自白。下剤で人が死ぬとは思わなかったようですが、狂信的なファンでバンドの妨害をする人にも容赦がなかったようです。

バリーを絞殺し、牧師には下剤入りチョコを、ニックには大量のLSDを、モースにも幻覚剤を飲ませたエマ…。 ブライト警視正が言うようにとんでもない娘でしたね。

エマの心情は最初に歌われていた ミミの「キス・ミー」の歌詞である「私を愛してるふりをして…」に重なっているよう。 最初の歌はドラマ用に作詞作曲されたそうです。

モースが大丈夫か確かめるため、サンドウィッチの曜日クイズを出すサーズデイ。コンビーフは金曜日。 ここでもサンドウィッチが活躍しましたね。

モースはニックのように後遺症が残らなくて本当によかったですね。 その後、「ワイルドウッド」は解散に。 「ワイルドウッド」は解散が報じられた新聞には原作者コリン・デクスターの写真も掲載されています。

ジョアンから電話が?!

モースにはジョアンからと思われる電話が。ジョアンはレミントンに住んでいる模様。無言で切ってしまうなんて、何か事情があるのでしょうか…。

両親に連絡もしていないジョアン。面倒に巻き込まれてないといいですね。

そして、最後にはまたタロットカードが。今度は「恋人」のカード。

恋人 (タロット)

カード番号は「 6」。前のカードは「5 教皇」、次のカードは「7 戦車 」。 正位置の意味 誘惑と戦う、自分への信頼、価値観の確立、情熱、共感、選択、絆、深い結びつき、結婚、継続。 逆位置の意味 誘惑、不道徳、失恋、空回り、無視、集中力欠如、空虚、結婚生活の破綻、無干渉。 アーサー・エドワード・ウェイトの タロット図解 における解説では「魅力・愛・美」を意味するとされる。 ...

タロットカードにはどんな意味があるのか気になりますね。

今回の主な事件関係者

  • ミセス・ジョイ・ペティボン テレビ浄化委員会のリーダー。脅迫状が届くが自作自演だった。
  • ベティーナ ペティボンの娘。
  • ゴーライトリー牧師 ペティボンの賛同者。下剤で入りチョコで死亡。
  • ニック 人気のロックバンド「ワイルドウッド」のボーカル。LSDを盛られる。
  • ケン 「ワイルドウッド」のギター。ニックの兄。
  • クリストファー 「ワイルドウッド」のベース。ニックの親友。
  • スティックス 「ワイルドウッド」のドラマー。
  • バリー・フィンチ レンガ職人。パブの裏で遺体で発見。
  • ピッパ ステージ衣装のお針子。マルキ・ド・サドの「ジュスティーヌ」を朗読。
  • エマ ステージ衣装のお針子。犯人。
  • アンナ・ブリット クリストファーの妻
  • ラルフ・スペンダー 「ワイルドウッド」のマネージャー
  • ドクター・バクシ 「ワイルドウッド」の医師
  • ダッドリー・ジェソップ ゲイでペティボンの活動に反対する。

Case15「汚れなき歌声」で流れた曲

  • Turn Into Earth - THE YARDBIRDS
  • Red House - JIMI HENDRIX
  • I Feel Free - CREAM
  • String Quartet No. 14 In D Minor D.810, "Death and the Maiden": I. Allegro - フランツ・シューベルト
  • Messa di Requiem: I. a) Requiem - ジュゼッペ・ヴェルディ

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』の登場人物・キャストについてはこちらへ>>

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