※前半にネタバレはありません。
海外ドラマ『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』はイギリスのテレビ局BBCで2018年に放送されたミステリードラマ。
「ミステリの女王」と言われるイギリスの推理作家アガサ・クリスティーの小説で、灰色の脳細胞で有名な名探偵ポワロが登場する「ABC殺人事件(原題:The ABC Murders)」をドラマ化した作品です。
1933年、イギリスのロンドン。名探偵ポワロのもとに奇妙な手紙が。Aで始まる町でAで始まる名前の女性が殺され、次はB、Cと殺人が発生。ポワロは予告殺人を阻止しようと捜査を始めるというストーリー。
名探偵ポワロを演じるのは、映画 『マルコヴィッチの穴』『RED/レッド』シリーズなどで知られるジョン・マルコヴィッチ。
映画『ハリー・ポッター』シリーズでロン・ウィーズリーを演じていたルパート・グリントがクローム警部役で出演しています。
アガサ・クリスティー原作のドラマ『そして誰もいなくなった』『検察側の証人』『無実はさいなむ』と同じく『ABC殺人事件』の脚本を担当したのは、サラ・フェルプス。
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』は全3話です。
- 『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』の登場人物・キャスト>>
- 『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第1話のあらすじ>>
- 『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第2話のあらすじ>>
- 『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第3話【終】のあらすじ>>
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』の評価
- IMDbの点数 6.6(5,173人の評価)
- ロッテン・トマトの評価 72%
IMDbの点数の目安
海外大手映画データベースIMDb(インターネット・ムービー・データベース)の点数は10点満点評価。IMDbユーザーがつけた平均点が表示されます。感覚的には、評価の人数が多く、6.5点以上ならまあまあ、7点台なら楽しめる作品、8点以上は傑作になっていると思います。ロッテン・トマトの評価の見方
プロの評論家によるレビューサイト「ロッテン・トマト」では、良い評価が60%を下回ると腐った緑色のトマトのマーク、 良い評価が60%以上の作品には新鮮な真っ赤なトマトのマークがつけられます。
さらに良い評価が70%以上で、厳しい条件を満たした作品にはCertified Fresh(新鮮保証)というマークが付けられています。
※ここから『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』のネタバレがあります。注意してください。
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第1話のあらすじ
1933年のイギリス ロンドン。老けた名探偵エルキュール・ポワロのもとに殺人を予告するような不気味な手紙が届き始める。 「ABC」から送られてくる不気味な手紙を友人のジャップ警部に見せようとするが、すでにジャップ警部は退職していた。 警察を引退したジャップに手紙のことを相談したポワロ。しかし、ジャップは心臓発作で倒れ、亡くなってしまう。
ポワロはジャップの後任で、若いクローム警部に相談するが、全く取り合ってもらえない。 「ABC」からの手紙には、「3月31日」「アンドーバー Andover」と書かれており、ポアロは1人でアンドーバーへ向かう。 アンドーバーでは、たばこ屋のアリス・アッシャー(ALICE ASHER)が殺害されていた。 遺体のそばには、Aのページが開かれたABC鉄道案内が。アリスはストッキングをはいていた。
さらに、「ABC」からの手紙には「4月4日」「BはベクスヒルBEXHILLのBだ」と次なる犯行予告の手紙がポワロに届く。 ベクスヒル(BEXHILL)では、ベティ・バーナード(BETTY BARNARD)がストッキングで絞殺され、そばにはBのページが開かれたABC鉄道案内が。
チャーストン(CHURSTON)では、妻のハーマイオニーが、夫のサー・カーマイケル・クラーク(SIR CARMICHAEL CLARKE)に対して秘書のソーラが色目を使っていると取り乱す。病気のハーマイオニーは血を吐くが、秘書のソーラは医者を呼ぶのを躊躇する。アレキサンダー・ボナパルト・カスト(ALEXANDER BONAPARTE CUST)はストッキングのセールスマン。カストはアリスが殺されたアンドーバー、ベティが殺されたベクスヒルの現場にもいたのだった。 カストの下宿先の娘リリーは母親に売春をさせられていた。
外国人流入を許すなという風潮の中、ベルギー人のポワロの身辺調査が行われ、ポワロは昔、ベルギーの警察にいなかったという調査結果が出ていた。 そのため、ジャップ警部は退職させられることになったとポワロを責めるクローム警部。
「ABC」からの手紙には「少し休んでからまた続きを始めよう」と書かれていた。
カストはABC鉄道案内のCのページにストッキングを挟み、ストレッチ。 上の部屋からはあえぎ声が聞こえるのだった。
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』の登場人物・キャスト
※年齢は2019年7月現在のものです。- エルキュール・ポワロ
ベルギー人の名探偵。第一次世界大戦中にイギリスに亡命し、名探偵として活躍した。
演じているのは…
ジョン・マルコヴィッチ(John Malkovich)
1953年12月9日、アメリカ イリノイ州生まれ。身長183㎝。年齢65歳。
映画『ザ・シークレット・サービス』『コン・エアー』『マルコヴィッチの穴』『RED/レッド』シリーズなどに出演。
- クローム警部
ロンドン警視庁の若い警部。ポワロの友人ジャップ警部の後任で、ポワロのことを邪険にする。
演じているのは…
ルパート・グリント (Rupert Grint)
1988年8月24日、イギリス ハートフォードシャー州生まれ。身長173㎝。年齢30歳。
映画『ハリー・ポッター』シリーズに、ロン・ウィーズリー役で出演。
- アレキサンダー・ボナパルト・カスト
ストッキングのセールスマン。ローズ・マーブリーの下宿に住んでいる。
演じているのは…
エイモン・ファレン イーモン・ファーレンとも表記(Eamon Farren)
1985年5月19日、オーストラリア生まれ。身長182㎝。年齢34歳。
ドラマ『ツイン・ピークス The Return』やホラー映画『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』などに出演。
- ローズ・マーブリー
愛想のない下宿屋の主人。
演じているのは…
シャーリー・ヘンダーソン(Shirley Henderson)
1965年11月24日、イギリス スコットランド生まれ。身長154㎝。年齢53歳。
映画『ハリー・ポッターと秘密の部屋』に 嘆きのマートル役で出演。
- リリー・マーブリー
ローズの娘。下宿人に性的なサービスをしている。
演じているのは…
アーニャ・チャロトラ アーニャ・シャロトラとも表記(Anya Chalotra)
1996年、イギリス生まれ。身長168㎝。年齢23歳。
ドラマ『ワンダーラスト:幸せになるためのセラピー』に出演。 ヘンリー・カヴィル主演のNetflixオリジナルドラマ『ウィッチャー』にキャスティングされています。
- ベティ・バーナード
夜遊び好きのメーガンの妹。ABC殺人事件のBの犠牲者になる。姉メーガンの恋人だったドナルドを奪った。
演じているのは…
イヴ・オースティン(Eve Austin)
生年月日などは不明。ドラマ『冤罪~弁護士エマの挑戦~』などに出演。
- メーガン・バーナード
ベティの姉。妹のベティに恋人のドナルドを奪われた。
演じているのは…
ブロンウィン・ジェームズ (Bronwyn James)
生年月日などは不明。娼婦たちを描いたドラマ『Harlots/ハーロッツ 快楽の代償』などに出演。
- ドナルド・フレイザー
殺されたベティの婚約者。以前はメーガンと付き合っていた。
演じているのは…
ジャック・ファーシング(Jack Farthing)
1985年10月14日、イギリス ロンドン生まれ。身長 173㎝。年齢33歳。
デヴィッド・スーシェがポワロを演じたドラマ 名探偵ポワロの「ビッグ・フォー」に出演。 歴史ロマンスドラマ『風の勇士 ポルダーク』にはジョージ・ワーレガン役で出演。
- サー・カーマイケル・クラーク
上流階級の紳士。
演じているのは…
クリストファー・ヴィラーズ クリストファー・ヴィリアーズとも表記(Christopher Villiers)
1960年9月7日、イギリス ロンドン生まれ。身長178㎝。年齢58歳。
映画『トップ・シークレット』やドラマ『ニュー・トリックス ~退職デカの事件簿~』などに出演。
- ハーマイオニー・クラーク夫人
サー・カーマイケルの妻。病気を患っている。
演じているのは…
タラ・フィッツジェラルド(Tara Fitzgerald)
1967年9月18日、イギリス生まれ。身長165㎝。年齢51歳。
ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』では、 スタニス・バラシオンの妻 セリース・バラシオン役で出演。
- フランクリン・クラーク
サー・カーマイケルの弟。ハーマイオニーに信頼されている。
演じているのは…
アンドリュー・バカン (Andrew Buchan)
1979年2月19日、イギリス生まれ。身長185㎝。年齢40歳。
ミステリードラマ『ブロードチャーチ ~殺意の町~』で、被害者の父親マーク・ラティマー役で出演。
- ソーラ・グレイ
クラーク家の秘書。
演じているのは…
フレイヤ・メイヴァー (Freya Mavor)
1993年8月13日、イギリス スコットランド生まれ。身長178㎝。年齢25歳。
イギリスのティーンドラマ『 Skins - スキンズ』などに出演。
- イェランド巡査部長
ロンドン警視庁の巡査部長で、クローム警部の部下。
演じているのは…
マイケル・シェーファー (Michael Shaeffer)
生年月日などは不明。映画『アンナ・カレーニナ』や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などに出演。
(ALEXANDER BONAPARTE CUST)
(BETTY BARNARD)
(SIR CARMICHAEL CLARKE)
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第1話の感想
排外主義の空気が流れ、全体的に暗い雰囲気。タイプライターを打つ、重厚な音が印象的ですね。 名探偵ポワロを演じるのは、ジョン・マルコヴィッチ。ポワロと言えばデヴィッド・スーシェの丸々と太ったポワロの印象が強いですが、その印象とは違い、年老いたポワロに。
クローム警部役を演じるのは、映画『ハリー・ポッター』シリーズで知られるルパート・グリント。 『ハリー・ポッター』シリーズのひょうきんなロン役とは違って、ポワロに厳しく当たる警部役に。
オープニングでは線路が絡まりあい、うずくまっているような人の形に。何かを象徴しているのでしょうか…。
「ABC」から不気味な手紙が届く
すっかり年老いたポワロは自慢のひげを黒く染めようとし、失敗。 そんなポワロのもとに届き始めた「ABC」からの手紙。最後にはいつも「乾杯」という言葉が。
「首筋に僕の吐息を感じたか? エルキュール」とポワロを挑発する犯人。ポワロに心酔するストーカーのようですね。 名探偵ポワロのファンであることは間違いなさそう。
「僕は顔のない獣となり、子羊を殺戮へと導く」と物騒な内容にポワロも危機感を覚え、警察に相談へ。 ポアロが登場する小説でおなじみのジャップ警部と共に捜査を開始するのかと思いきや、ジャップ警部はすでに退職…。
ジェームス・ハロルド・ジャップ - Wikipedia
ロンドン警視庁に勤務するベテラン刑事。ロンドン近辺で発生する事件ではほとんどの場合、現場捜査に訪れる。作中でも基本的に優秀な刑事として描かれてはいるが、ポアロ相手では先を越されてしまう。多くの警察関係者がそうであるように私立探偵の存在を疎ましく思っているが、ポアロの捜査能力については一目を置いている。ポアロとは旧知の間柄で、『スタイルズ荘の怪事件』以前にも1904年のアバークロンビー偽造事件...
警察に相手にされず、退職したジャップに会いに行くポワロ。 ポワロとジャップはいい友人同士だとほのぼのしていたら、ジャップは心臓発作で死亡! いきなり目の前で友人が倒れてしまったのがショッキング。
夕食に誘われ、ジャム・ローリーポーリーのカスタードがけもあるというジャップ。 ジャム・ローリーポーリーとはイギリスのデザートで、ロールケーキのように巻いたプディングのことだそう。「ピーターラビット」にも登場するイギリスのお菓子だそうです。
Jam Roly Poly * ジャム・ローリーポーリー - British tea style
このジャムが巻かれた渦巻き状のお菓子の存在を知ったのは中学生の頃、図書館で借りた赤毛のアンのお料理ブックにジャム巻きプディングとして紹介されていました。 ふっくらもっちりしていそうな白い生地に赤いジャムが巻かれているその菓子の見た目の可愛いこと! ...
いつもフランス人に間違われるポワロ。小説でもフランス人に間違われて、「ベルギー人です!」と否定するシーンは有名ですね。
イギリスに19年も住んでいるポワロですが、排外主義的になったイギリスでは「出ていけ」という誹謗中傷の手紙が毎日来るように…。 悪意や憎しみの塊のようなものが毎日来るというのが、恐ろしいですね。
電車でも車掌にわざと切符を落とされるポワロ。まるで子供のようなひどい嫌がらせ! 「外国人流入を許すな」というポスターと同じ稲妻のようなマークの襟章をしていた車掌。稲妻のようなマークがナチスを思わせますね。
ABC順に殺人事件が発生
どうやらポワロに手紙を書いているのは、アレキサンダー・ボナパルト・カスト(ALEXANDER BONAPARTE CUST)というストッキングのセールスマン。 殺人現場にも残されていた「ツインクル・トーズ」というストッキングを売り歩いているカスト。
アレキサンダー・ボナパルト・カスト(ALEXANDER BONAPARTE CUST)のイニシャルは、A.B.C.!
アンドーバー(ANDOVER)では、アリス・アッシャー(ALICE ASHER)が殺され、ベクスヒル(BEXHILL)では、ベティ・バーナード(BETTY BARNARD)が殺害され、アルファベット順に犠牲者が。 「ABC鉄道案内」は実際に発売されていた鉄道案内本だそう。
ABC Rail Guide - Wikipedia
The ABC Rail Guide , first published in 1853 as The ABC or Alphabetical Railway Guide , was a monthly railway timetable guide to the United Kingdom that was organised on an alphabetical basis that made it easier to use than its competitor Bradshaw's Guide which had a reputation for difficulty.
1人目の犠牲者アリス・アッシャー殺害犯として逮捕されたのは、アリスの飲んだくれの夫。 ポワロが夫は犯人ではないと華麗な推理を披露しても、聞き入れてもらえないのがもどかしい。 それにしても、アンドーバーであった事件としてあげられていた、入れ歯をめぐって争いがあったというのが笑えますね。
2人目の犠牲者ベティ・バーナードは姉の恋人を奪っておきながら、夜遊びに出歩くあばずれ。 母親のジェニーだけは本性に気付かず、天使そのものだと信じていたのでした。
姉のメーガンから恋人のドナルドを略奪したにもかかわらず、いけしゃあしゃあと「感謝してほしいくらい」だというベティ。 さらに、ストッキングのセールスマンであるカストもさんざんバカに。ABC殺人事件で殺されなくても、いつか誰かに刺されそうな人物でしたね。
「自分が触ったものが私に触れていることに感謝すべき」と言い、自分の脚を見せることで、ストッキングのお金を踏み倒したベティにはあきれるしかない。 一体どこからそんな自信が…。
カストは殺されたベティともかかわりが。 アリス殺害事件の後、顔にけがをしていたカストがABC殺人事件の犯人なのでしょうか…。その割に、人を殺した自覚はなさそうなのが気になりますね。
次はCの殺人が!?
そして、次なる犠牲者はCの付く地名のチャーストン(CHURSTON)に住むサー・カーマイケル・クラーク(SIR CARMICHAEL CLARKE)のようです。
カーマイケルの妻ハーマイオニーは秘書のソーラが夫に色目を使っていると非難。 カーマイケルには弟フランクリンが。
病気のハーマイオニーは先が長くないようですね。 秘書のソーラもカーマイケルを狙っているのは間違いなさそう。 医者を呼ぶのを躊躇したソーラ。「家の仕事はしません」と医者に電話することさえ断ろうとしたソーラは感じ悪い…。妻のハーマイオニーがワインをかけたくなるのもわかる気が。
「ベティの最期の息を吸い込んで味わった」というサイコパスな文章を送ってくるABC。 ABC殺人事件はポワロに対する挑戦で、無差別殺人なのでしょうか…。 Aのアリスはよくわかりませんが、Bのベティを恨んでいた人物は姉のメーガンを含めて多そう。
ベティの働いていたカフェにポワロのサインがあったり、ハーマイオニーたちと撮った写真があったりと、ポワロの過去の栄光を思わせるものも登場。クローム警部が悪趣味だと軽蔑していた「殺人パーティー」にポワロも招かれていたようですね。
ポワロに隠された過去が?
ポワロを過去の遺物だと、笑い者にするクローム警部。 こんなにもポワロにつらく当たるのにも理由がありました。
なんとポワロは1914年以前ベルギーのどの警察にもいた記録がないことが発覚。 それが原因で、ジャップ警部は退職させられることになったようです。ポワロと共にあげてきた功績も数多くあったはずなのに、外国人であるポワロの経歴が原因で、一瞬にして失脚するというのも、排外主義が吹き荒れる世論の恐ろしさを感じますね。
ジャップ警部はポワロのせいで失脚し、挙句に死ぬことになったと責めるクローム警部。 ポワロは、第一次世界大戦のベルギーでの暗い過去を隠しているようですね。
ベルギー警察にいなかったというポワロの正体は!? 一体若き日のポワロに何が起こったのでしょうか…。
カストの下宿にはリリーという娘が
ABC殺人の犯人らしきカストの下宿には、母親に売春させられている娘リリーが。 娘に体を売らせるなんて、ひどい母親。
リリーの歌声と赤い靴が印象的ですね。 リリーが歌っていたのは、コール・ポーターの「夜も昼も」(原題:Night and Day)という歌だそう。リリーはひどい生活から抜け出してほしいですね。
Night And Day - Cole Porter
Like the beat beat beat of the tom-tom When the jungle shadows fall Like the tick tick tock of the stately clock As it stands against the wall Like the drip drip drip of the raindrops When the summer shower is through So a voice within me keeps repeating You,
「少し休んでから、また続きを始めよう」という「ABC」。 果たしてポワロは次のCの殺人を止めることはできるのでしょうか…。
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第2話のあらすじ
Aから始まる地名ではAのイニシャルの女性が殺され、Bから始まる地名ではBのイニシャルの女性が殺され、それぞれの遺体のそばにはABC鉄道案内が。
ABCからの手紙が間違ってポワロの向かいの部屋に届けられてしまい、チャーストン(CHURSTON)に住むサー・カーマイケル・クラーク(SIR CARMICHAEL CLARKE)はポワロが警告する前に殺されてしまう。
殺人が起こったアンドーバー、ベクスヒル、チャーストンにはポワロが以前、行ったことがあるという共通点を見つける。 兄のサー・カーマイケルを殺されたフランクリンはポワロを雇い、犯人を捕まえてほしいと依頼。
ポワロはアンドーバーで殺されたアリス・アッシャーが新しいストッキングをはき、ベクスヒルで殺されたベティ・バーナードもストッキングで絞殺されていたことに注目。アリスの暖炉に燃え残っていたストッキングのパッケージでストッキングの種類を絞り込もうとする。
ベティを連れ戻しに行ったクラブで、ポワロと同じ格好をした男とすれ違ったというベティの姉メーガン。 サー・カーマイケルが殺された日にも、ポワロと同じ格好をしたセールスマンがストッキングを売りに来ていたことが判明する。
ストッキングのセールスマンであるカストは、下宿先の娘のリリーにヒールで背中を踏ませていた。
ポワロには4月15日にドンカスター(DONCASTER)で殺人を起こすと予告する手紙がABCから届く。 ハイヨー!(Giddy up!)と馬の掛け声が手紙に書かれていたことから、クローム警部とポワロはドンカスター競馬場で張り込むが、殺人が発生したのは劇場だった。
さらに、殺されたのはDのイニシャルのデクスター・ドゥーリー(DEXTER DOOLEY)ではなく、下品なコメディアンのベニー・グルー(Benny Grew)だった。
壊滅的な勘違いをしたABC。ポワロは嵐のような虐殺が起こることを警戒する。
ドンカスターから列車で戻ったポワロは、自分と同じ格好をした犯人と思われる男の姿を遠くから目撃。 ポワロがその男の姿を追うと、電話が。息遣いだけが聞こえ、電話は切れてしまう。
電話のそばには、「何者だ エルキュール。本当は何者だ?」と書かれた手紙が残されていた。
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第2話の感想
手紙は女性が書いている?
ポワロに強く執着している犯人。
手紙が間違って届けられていたせいで、警告も間に合わず…。 ポワロの向かいに住む人カーカムもまたファシスト連合のバッジをつける排外主義者。 ポワロは別だと白々しく言うカーカム。
新聞には「ポワロが警察に情報を隠匿した」という根も葉もない記事が。その記事のせいで、罵られるポワロ。 ABC殺人で恐怖に陥り、すべてを外国人のポワロのせいにしようとする世間が怖いですね。
チャーストンで殺されたカーマイケルはシャベルで殴られ、その次は首をぐさり。首が胴体からちぎれかかってたというのが残虐…。 ポワロはABCからの手紙は、男性という印象を与えたくて女性が書いているような感じだと指摘。手紙は女性が書き、犯行は男性がしているのでしょうか…。
ポワロが行ったことある町で殺人が発生していた
殺人が発生したアンドーバー、ベクスヒル、チャーストンには、ポワロが行ったことがあるという共通点が。ただのABC順ではなかったんですね。
アンドーバーにはポワロも知らないうちに来ていたことが判明。1914年、ベルギーから亡命してきたときに乗っていた列車の中で、赤ちゃんを取り上げていたポワロ。その場所がアンドーバー。
推理だけでなく、赤ちゃんを取り上げることもできたなんて! クローム警部も驚きなのでした。
ポワロ自身も来ていたと知らなかった場所まで知っている犯人が怖い…。まさにストーカーを思わせる執着心で、ポワロのことは何もかも調べ上げているポワロマニアのようです。
その時にアンドーバーで生まれた子は19歳。その子が犯人なのでしょうか…。カストはもっと年上に見えるので、その時の子とは違いそうですね。
ベクスヒルには1921年にジンジャー・キャット・カフェで軽食を。殺されたベティが働いていたジンジャー・キャット・カフェにはポワロのサインが飾られていましたね。
チャーストンには5年前の1928年、ハーマイオニーの誕生日パーティーにサプライズゲストとして呼ばれていたポワロ。この時の写真もクームサイド館に飾られていましたね。
チャーストンのクームサイド館で殺人推理ゲームを披露し、ポワロの大ファンであるハーマイオニーに喜ばれるポワロ。 「誕生日殺人」という物騒な言葉も登場。推理小説のタイトルにありそう…。まさか5年後に本当の殺人が起こることも知らずに、はしゃぐ人々が無邪気ですね。
ハーマイオニーはポワロの大ファン
ポワロの大ファンであるハーマイオニーには喉に腫瘍が。血を吐き、苦しそうなハーマイオニーでしたが、秘書のソーラの本性はしっかりと見抜いていたのでした。
モルヒネのせいで、夫が死んだことすら時々忘れてしまうハーマイオニーが気の毒に。病気で自分が先に死ぬと覚悟していたはずなのに、まさか夫が先に殺されるとは思いもしなかったはず。
でも、ポワロの大ファンであるハーマイオニーになら、ポワロの過去をすべて知っていてもおかしくなさそう…。
カーマイケルに色目を使い、キスまでしてクビになっていたソーラ。 フランクリンやカーマイケルの前では、か弱いふりをして猫をかぶるソーラは、カーマイケルが死んだあとには髪型とメイクをチェンジ。 化粧が濃い…。
今度はフランクリン好みの格好にしたのでしょうか…。
ポワロにストッキングを売りに来たセールスマンのことで問い詰められ、泣き出すソーラ。悲劇のヒロイン気取りなのがイラっとしますね。どうせウソ泣きなのに、フランクリンはソーラをやさしく慰め、ご機嫌取り。 ソーラとフランクリンは親しげで、怪しい雰囲気ですね。
ハーマイオニーから、フランクリンをソーラから守ってと頼まれたポワロは務めを果たせるのでしょうか…。
ポワロと同じ格好をした男が犯行現場で目撃されていた
フランクリンにABC殺人の捜査を依頼されたポワロは、殺されたベティの姉メーガンにも話を聞きに。
メーガンと付き合っていたくせに、妹のベティに乗り換えてからも、何食わぬ顔で夕食に来ていたドナルド。 どんな神経をしているのかと憤りを覚えていたら、それだけではなく、「もっと努力して明るくしてれば、僕だってよそ見はしなかったかもしれない」と自分のしたことを棚に上げ、メーガンを責める始末!
ひどすぎる態度で言葉も出ないですね。 しかも、妹に乗りかえるというひどいことを娘にされたのに、母親はドナルドを息子のように気に入っているという とんでもない状況には、開いた口が塞がらない…。
それでも、まだドナルドをかばうメーガン。ドナルドも母親も、メーガンをないがしろにしすぎ。 「彼(ドナルド)をどう思うかは私の自由です」ときっぱりと言ってくれたポワロにすっきりしました。
ポワロの後ろ姿で、カストとすれ違ったことに気付いたメーガン。今まで気づきませんでしたが、カストはポワロと同じ格好。 アンドーバーでも、ベクスヒルでも、チャーストンでもドンカスターでもストッキングを売りに来ていたカスト。
殺人が発生したとき常に、その場所にいるカストは怪しいですが、逆に怪しすぎて犯人ではなさそう。
発作を起こすカスト
カストの下宿先には、リリーに頻繁に性的サービスをさせているトレッドゴールドが。その男の首の後ろには膿のたまった大きなできものが。 半熟の目玉焼きとそのできものが重なって、気持ち悪い…。
カストは持病があるらしく、ベッドの上で体をのけぞらせ、けいれん。その時、最初に映ったカストの顔が怖すぎて、ホラーかと…。
リリーには、ストッキングできつく目隠ししてもらい、ヒールで背中を踏んでもらっていたカスト。ハードなSMプレイにびっくり。 「僕の中から闇を追い出して」というカスト。マゾヒストのカストにはどんな心の闇があるのでしょうか…。
リリーはバックギャモンに書かれたアレキサンダー・ボナパルト・カスト(ALEXANDER BONAPARTE CUST)のイニシャルからABC殺人の犯人がカストだと冗談を。
ボナパルトはナポレオン・ボナパルトの名前で知られるようにフランスの名前のようですね。 フランス系の名前だけで、嫌われるというのが理不尽。ここにもファシストの波が。
それにしても、ヒールで背中の傷口をさらに踏んでもらうシーンが衝撃的でした。
Dでミスをする犯人
ABCからの次なる手紙は、ドンカスター(DONCASTER)で殺人が起こるというもの。 腹話術師のデクスター・ドゥーリー(DEXTER DOOLEY)が殺されると思いきや、殺害されたのは下品なコメディアンのベニー・グルー(Benny Grew)。イニシャルが全く違う!
デクスターの腹話術の人形の目に接着剤を塗るなど、いたずらを繰り返していたベニー。 くしくも、その腹話術の人形が唯一の殺人の目撃者となったのでした。
ハイヨー!(Giddy up!)という馬の掛け声が手紙にあったため、競馬場で張り込んでいたポワロたち。 Giddy up!という掛け声は、馬をもっと速く走らせるための掛け声だそう。
ミスを犯したABC。次は、Eの犯行にすぐ移る気になのでしょうか…。それとも、Dの犯行をやり直す?? ポワロは虐殺を警戒。ABC順に殺してきた犯人は暴走を始めてしまうのでしょうか…。
過去がフラッシュバックするポワロ
同じ格好をした男を駅で追いかけるポワロ。 犯人からの電話には息遣いだけが聞こえてくるというのが、まさにストーカー!
しかも、残された手紙には「本当は何者だ?」というメッセージが。 ストーカーである犯人にもポワロの正体は分かっていないようですね。
教会でも聖体拝領を受けず、神を信じられないと神父に訴えるポワロ。カトリック信者のポワロは、過去に経験した悲惨な出来事が原因で神を信じられなくなったようですね。
時折、ポワロは昔のことを回想。血まみれの男の顔が列車の窓に映ったり、兵隊が攻めてくるときを繰り返し思い出しているポワロ。 ポワロは、その時に殺された人になりすましたのでしょうか…。
「メザンファン」というポワロの口癖はフランス語で「私の子どもたち」という意味だそう。ドナルドが「人を子ども扱いしないでくれ」と抗議したのはそういう意味だったからなんですね。 ポワロにとってはただの呼びかけで、深い意味はないようです。
ABCが手紙に書いていた「モン・シェール エルキュール」の「モン・シェール」は、手紙の冒頭でよく使われるフランス語で「親愛なる」という意味だそう。
「神はすべてをゆるす。私はゆるさない」と宣言していたポワロ。 ポワロは犯人を捕まえることができるのでしょうか…。
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第3話のあらすじ
アルファベット順に起こる連続殺人事件。A、B、C、Dと殺人が発生し、Dでミスを犯したABC殺人犯からは手紙が来なくなる。
そんな中、エンブジー(EMBSAY)駅のトイレで アーニー・エドワーズ(Ernie Edwards)が殺害される。エドワーズは女性に贈るためにストッキングを買っていた。 その現場にもカストがいた。発作を起こして目覚めると、血まみれのナイフがポケットにあったカストはパニックになり、逃げだす。
ポワロはA、B、C、D、E、それぞれの事件現場に関係している「ツインクル・トーズ」のストッキング会社へ。
ロンドンから個別販売のための大口の注文があったが、名前は不明。さらに、アレキサンダー・B・カストから「ご指示通りにいたしました」という手紙が会社に届いていたが、ストッキング会社の経営者はアレキサンダー・B・カストは「ツインクル・トーズ」のセールスマンではないため不審に思っていた。
クローム警部はカストの下宿を家宅捜索。ストッキングにABC鉄道案内、タイプライターも見つかる。 リリーはカストを逃がそうとするが、逃走中、カストは列車に轢かれそうに。カストは発作を起こし、病院へ運ばれる。 カストは脳の成長に問題があり、発作を起こして、記憶もあいまいだった。
ポワロはカストはABC殺人犯ではないと気付く。 カストはバックギャモンで負けた人物にストッキングのセールスマンの仕事を紹介してもらっていた。 その人物とはCで殺されたチャーストン(CHURSTON)に住むサー・カーマイケル・クラーク(SIR CARMICHAEL CLARKE)の弟フランクリンだった。
バックギャモンでカストと出会ったフランクリンは、カストのA.B.C.というイニシャルで殺人計画を発想。
金のないフランクリンは、兄の称号と財産目当てでカーマイケルを殺害。 A、B、その他の殺人は兄が真のターゲットだと気付かれないためだった。
カストを犯人に仕立て上げるため、下宿を用意し、ストッキングの会社を装い、どの場所へいつ行くかや、ストッキングを買ってくれそうな人の名前と住所のリストをアルファベット順で指示。 ポワロに似た帽子やコートもフランクリンが送ったものだった。
ハーマイオニーの誕生会でポワロが行った殺人ゲームで自分の殺人衝動を自覚し、ポワロに執着していたフランクリン。 ポワロに似た帽子やコートは、闇と光、狩る者と狩られる者を演出するため。
フランクリンはどん底にいたポワロを自分がよみがえらせたと豪語。 フランクリンはポワロと対等なライバルになりたいと思っていたのだった。
兄を殺害し、返り血を浴びたフランクリンは秘書だったソーラを脅し、ポワロの前でも泣く演技をさせていた。 フランクリンは殺人の味を覚え、ターゲットのカーマイケルを殺しても、殺人を続け、ポワロとの駆け引きを楽しんでいた。
カストが逮捕され、油断したフランクリンが残したブランデーのグラスの指紋とタイプライターについていた指紋が一致。それが決定的な証拠となり、フランクリンは絞首刑となることが決まる。
絞首刑直前にポワロは頼まれた最期の朝食を用意。 フランクリンはポワロが何者か知りたがるが、ポワロは決して教えようとはしなかった。
イギリスに亡命する前、実はポワロは神父だった。口癖の「メザンファン(我が子たちよ)」は信者に呼びかける言葉。
敵の兵隊たちがやってきて、教会に住民たちを避難させたポワロ。兵士の青年はポワロを撃てず、上官に射殺され、ポワロは殴られて気絶。 その間に、教会は住民ごと燃やされ、火の海となっていた。
「きっと僕が恋しくなるよ。エルキュール」という言葉を残し、フランクリンの絞首刑が執行されるのだった。
『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』第3話の感想
ポワロはベルギーで神父だった
ついにポワロの過去が明らかに。まさかポワロがカトリックの神父だったとは!
信者たちが教会ごと燃やされたせいで、神を疑うようになったようですね。 神父だったポワロも、探偵のポワロのようにずば抜けた推理力で人々の悩みを見抜き、助けていたのでしょうか…。
1914年にイギリスに亡命していたポワロ。第一次世界大戦のベルギーで起こったリエージュの戦いで信者たちが犠牲になってしまったようです。
リエージュの戦い
リエージュの戦い(リエージュのたたかい、Battle of Liège, 1914年 8月5日 - 8月16日)は、 第一次世界大戦の 西部戦線 の緒戦における重要な戦いの1つ。 シュリーフェン・プランに基づいて ベルギーを侵略した ドイツ帝国軍が、ベルギー東部の重要都市 リエージュの ...
ポワロの回想に何度も登場していた青年は、ポワロに銃を向けた兵士だったことが判明。 ポワロを撃てず、上官に射殺されたのが衝撃的。青年が信者ではなく、兵隊だったのも意外でしたね。まだ若く、人を殺すことをためらう心を持っていた青年も戦争の犠牲者に。住民たちも虐殺…。
信者たちが殺され、自分だけが生き残ったポワロ。 神父を続けられないと思い、亡命時に、職業は警察だと言ったようです。
神父だったときも、ポワロは町の難事件を解決していそうですね。誰も知らない過去の秘密を持っていたポワロ。
口癖の「メザンファン(我が子たちよ)」は神父だったポワロが信者たちに呼びかけるときに言っていた言葉だったと判明。 ポワロなりの処世術かと思ったら、口癖にもポワロの過去が隠されていたんですね。
ポワロに異常な執着心を燃やすフランクリンやクローム警部でも、突き止められなかった秘密。親友のジャップにすら言えなかった秘密…。 これからも、秘密を1人抱えたまま生きていくことになりそうですね。
犯人はカーマイケルの弟フランクリン
真犯人はフランクリン。 カストは罪をなすりつけるために真犯人のフランクリンに利用されただけでした。
脳の成長に問題があり、発作や記憶の問題があるカストに、フランクリンはつけこんだようです。原作ではカストはてんかんを患っているという設定だそう。 まず、病気の人に殺人の罪をなすりつけようとするのが最低ですね。
リリーに背中を踏ませていたのは、踏まれる痛みによって頭の中の苦悶を紛らわせていたから。変態プレイかと思ったら、自傷行為みたいなものだったようです。「自分が殺人を犯しているのでは…」と苦悩し、リリーに痛みを味わわせてもらっていたようです。
カストがフランクリンと出会ってしまったのは、バックギャモンの賭けで。
バックギャモンに書かれたカストのイニシャルA.B.C.で今回のABC殺人を思いついたフランクリン。 発想は天才的ですが、その頭脳をもっと他のことに使えばよかったのに…。
兄のサー・カーマイケル・クラーク(SIR CARMICHAEL CLARKE)のイニシャルがC.C.だったことで、Aから順に無関係の人まで殺害していくフランクリン。 サー(SIR)の称号と金のために兄を殺し、しまいには殺人を楽しんでいたフランクリンは怪物ですね。「木を隠すなら森の中」とばかりに次々と殺人を犯していったフランクリン。
「僕は怪物になりたくない」と言っていたカストとは対照的に、怪物になり果てたフランクリンがポワロに語る言葉の一つ一つが恐怖! ハーマイオニーは信頼していた義理の弟のフランクリンが犯人だと知り、失意のうちに亡くなってしまったのでした。
もしかして捕まっていなかったら、フランクリンはハーマイオニーが死ぬのを待てずに殺していたかもしれませんね。 ソーラも実はフランクリンに脅されていたことが判明。
レディの称号と財産を手に入れるため、黙ってフランクリンに従っていたようです。まさか男たらしのソーラが脅されていたとは…。ウソ泣きの芝居もフランクリンの気を引くためではなく、ポワロに聞かせるためにフランクリンがやらせたこと!
フランクリンはやさしそうな顔の裏に残酷な殺人鬼の顔を隠し持っていたのでした。それにしても、フランクリンが殺人鬼と知っていても、結婚しようと決め、ベッドを共にできるソーラは図太い神経ですね…。
フランクリンが逮捕されても、すぐに裕福そうな次のターゲットを見つけたソーラ。レディになる思惑が外れたソーラは、それでもしたたかに生きていきそうなのでした。
メーガンもリリーも家を出る
カストのバックギャモンを持ち、意識不明のカストが目覚めるまで待つというリリー。リリーは家を出たようです。カストが目覚めて、一緒にどこか遠くへ行ければいいですね。
メーガンも家を出ることに。妹のベティが殺されたため、ドナルドとメーガンが結婚することで話が勝手に進んでいたのにびっくり。 メーガンはいつも蚊帳の外…。
メーガンの母親まで結婚話に乗り気なのが、どうかしてる。 妹のベティに言われた言葉を思い出し、家を出ることを決意したメーガン。ひどい妹でしたが、結果的にメーガンが家を出る決意をさせてくれたのでした。
ポワロに強い執着心を持つフランクリン
フランクリンが殺人衝動を自覚したのは、ハーマイオニーの誕生会で殺人ゲームをしたとき。 「僕はいわばあなたが研いだナイフだ」というフランクリン。
殺人はポワロのせいだと言わんばかりのフランクリンにゾッとしますね。 フランクリンみたいなサイコパスはいずれ、ポワロがいなかったとしても、何かのせいにして殺人を犯していたはず。
タイプライターで書いた手紙で腹話術のようにして、カストを利用したフランクリン。腹話術という例えが面白いですね。 ポワロに魅了され、イギリスに亡命してきてからのポワロの行動まで調べ尽くしていたフランクリン。 ポワロへの強すぎる執着心には身の毛がよだちます!
兄のカーマイケルを殺した後も、殺人とポワロとの駆け引きを楽しんでいたフランクリン。 殺人は名探偵としてのポワロをよみがえらせるためだったとも証言。
対等のライバルとして秘密を打ち明けてもらえる存在だと認めてもらいたかったというフランクリン。 ポワロが大好きすぎて、怖すぎ…。ポワロの大ファンでストーカーだった殺人犯。 「僕らは同類だ」と主張するフランクリンですが、結局のところただの殺人鬼。ポワロとは似ても似つかない!
一方的に、ポワロに執着するフランクリンの言葉にはゾッとするばかり…。ポワロが最初に引っ掛かりを覚えたのは、「ポワロが前は結構お疲れのようで心配していた」という言葉。 ABCから手紙にもポワロを「老けて疲れた顔をしていた」「結構心配になったよ」という言葉が!
ピンときたポワロ。手紙の文面は女性が書いているかもと言っていましたが、書いていたのは結局、フランクリンでしたね。
ソーラも共犯者かと思いきや、玉の輿を狙って、フランクリンの殺人を黙認していただけなのでした。フランクリンにとっては口止めのために、結婚すると約束したようです…。 殺人鬼と結婚する気だったソーラ。ポワロの言う通り、ソーラも殺されていたかも…。
それなのに、称号と財産に目がくらんでいたソーラは警察に通報もせず、フランクリンがその後も殺人を犯すのを黙って見過ごしていたのでした。 もし、すぐに通報すればDとEの被害者は救えたかもしれないのに…。
それにしても、フランクリンがバスルームにいきなり入ってきたのは中に誰もいないと思ったからなのでしょうか…。
ABCからの手紙の言葉通り、ポワロのストーカーだったフランクリン。 自分が計画した殺人をポワロに捜査してもらいたくてウズウズしていたようです。そのために、大掛かりな見立て殺人を計画。
もはや兄を殺すことが目的か、ポワロを捜査に引きずり込むのが目的かわからないですね。 兄を殺すよりも、ポワロとの駆け引きの方が重要だったようにも見えるフランクリン。
フランクリンもポワロに捕まって、思う存分、大好きなポワロと話せて実はうれしかったんじゃないでしょうか…。
5人を殺害したABC殺人犯のフランクリンは絞首刑に
フランクリンをポワロの助けで逮捕したクローム警部。元警部のジャップにどう思われていたか、かなりに気にしていましたね。クローム警部にとっては、ジャップはあこがれの刑事だったのでしょうか…。
「残酷な新時代の新刑事」とおだてられた新聞記事の切り抜きを飾るクローム警部。 ポワロは「残酷な新時代」という言葉は、「過去を美化するだけのありきたりなノスタルジア。世の中は昔から残酷だ」とバッサリ。
戦争を生き延びたポワロにとっては、過去もまた残酷な時代。 過去を美化しがちな人間ですが、いつの時代にも残酷なことは起こっていることは忘れがち。
戦争時のポワロの頭の傷に触れ、「きっと僕が恋しくなるよ。エルキュール」とポワロのファーストネームを呼ぶフランクリン。 ポワロへの溺愛ぶりに、本当に身の毛がよだちますね。
フランクリンが殺したのは、アルファベット順に
- A アンドーバー(ANDOVER)
アリス・アッシャー(ALICE ASHER) - B ベクスヒル(BEXHILL)
ベティ・バーナード(BETTY BARNARD) - C チャーストン(CHURSTON)
サー・カーマイケル・クラーク(SIR CARMICHAEL CLARKE) - D ドンカスター(DONCASTER)
ベニー・グルー(BENNY GREW)
デクスター・ドゥーリー(DEXTER DOOLEY)と間違えるミス - E エンブジー(EMBSAY)
アーニー・エドワーズ(ERNIE EDWARDS)
最後の晩餐ならぬ最後の朝食を食べ、絞首台へ向かうフランクリン。 あとには絞首刑が執行された音だけが残されたのでした。
死ぬのを恐れていないように見えたフランクリン。 ポワロが神父だった過去を知らずに死んだのが、フランクリンにとっては一番の罰だったのかもしれませんね。
原作の『ABC殺人事件』
原作でも、カーマイケルの弟フランクリンが犯人。ドラマほどポワロに執着しておらず、ポワロが神父だったという過去は原作には登場していないようです。
アガサ・クリスティーの『蒼ざめた馬』もドラマ化
BBCは『そして誰もいなくなった』『アガサ・クリスティー 検察側の証人』『アガサ・クリスティー 無実はさいなむ』『アガサ・クリスティー ABC殺人事件』に続き、 アガサ・クリスティーの1961年に出版された小説『蒼ざめた馬』をドラマ化すると発表。
これまでと同じく脚本を担当するのは サラ・フェルプス。『蒼ざめた馬』のドラマ化も楽しみですね。