※ネタバレしています。
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』
Case9「ネバーランド」のあらすじ
ジャーナリストのエリック・パターソンの遺体が線路脇で発見される。 さらに、貯水池では刑務所から脱走したジョージ・アルドリッジも暴行されて溺死。 家出少年のトミー・コルクはアルドリッジ殺害を目撃していた。ウィンターグリーン参事もオフィスで刺殺される。
ジャーナリストのエリック・パターソンは新しい警察署が建てられる場所で、昔は少年矯正施設だったブレナム・ベイルで起こった性的虐待を調べていた。
エリック・パターソンはブレナム・ベイルにいたニコラス・マイヤーズに取材しようと試みるが、思い出したくない記憶をさぐられたニコラスはパニックになり、水曜日の新聞の個人広告に集合の合図「A.P.A.D. A41」を載せる。 それを知ったアルドリッジは土曜日に刑務所から脱走。
虐待の首謀者は新しい警察署の建設業者ランデスマンとブレナム・ベイルで所長をしていた議員のウィンターグリーン。 そして、現在 警察次長のディアー、ドクター・フェアブリッジが虐待を隠蔽していた。
「警察の寡婦と孤児の集い」で記者のパターソンから虐待について聞かれたウィンターグリーンたちは脱走したアルドリッジが全てをパターソンに暴露すると思い、パターソン、アルドリッジを始末するようにディアーに指示。
アルドリッジはドクター・フェアブリッジのコートを着ていたことから、ドクターに助けを求めたが裏切られたことがわかる。 ディアーは腐った警官たちに2人を始末させていた。
そして、議員のウィンターグリーンを殺したのは、秘書のアンジェラ・マクギャレットだった。 アンジェラはドクター・フェアブリッジの娘で、近くに住んでいたアンジェラも性的虐待を受けていた。 アンジェラはアルドリッジが溺死したという記事を見て、全てを思い出し、ウィンターグリーンを刺殺。 さらに、虐待が夢だと思わせた父親のドクター・フェアブリッジに注射を打ち、殺害。
おびき出されたモースはチャード警部補に銃で撃たれて殺されそうになるが、なんとか逃げ出す。 モースはブレナム・ベイルの1人が首吊り自殺した事件の捜査を担当したのがディアーとチャードだと気づく。 腐敗した警官を一掃したいと言っていたディアーこそが腐った警官だった。 モースはジェイクスもブレナム・ベイルにいたことを知る。
ディアーはサーズデイ警部補をおびき出し、物陰から銃で撃つ。 モースも銃で撃たれそうになるが、アンジェラが現れ、ディアーを射殺。 アンジェラは銃で頭を撃ち抜いて自殺してしまう。 モースはディアーにハメられ、スタンディッシュ警察本部長殺害の罪で逮捕されてしまうのだった。
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case8「情事の代償」前回のあらすじと感想はこちら≫Case9「ネバーランド」の感想
今回は1966年の12月が舞台のようですね。 時の流れを表すように、イワシの缶詰の広告は新しい広告に張り替えられるのでした。
こんな終わりかたをするなんでびっくり。 モースを気に入り、腐敗した警察を一掃したいと言っていたディアー警察次長が黒幕だったとは…。
チャード警部補もディアーの仲間。 前回のCase8「情事の代償」の絞殺魔事件で誤認逮捕していたチャード警部補。 三流刑事だっただけでなく、腐りきった警官の1人。 警察次長まで「腐ったリンゴ」(Bad apples)だったのでした。
Case6「失われた光」の手帳やCase7「鏡の国の少女」のフリーメイソンの指輪など証拠品が消えたのも、チャードやディアーが糸を引いていたのでしょうか?
ジェイクスの過去が明らかに
今回もたくさんの人物が登場し、混乱。 ブレナム・ベイルにいた子どもたちは- ヘンリー・ポートモア カレッジの教師でヒラリーの夫
- ニコラス・マイヤーズ 事務弁護士
- ベニー・トップリング 腹話術師 アルドリッジの房にチラシが
- ビッグ・ピート 子どもの頃に行方不明に
- エド・スペンサー ヒラリーのきょうだい 首吊り自殺した
- ジョージ・アルドリッジ 刑務所から脱走し、殺されてしまう
- アンジェラ・マクギャレット ドクター・フェアブリッジの娘 ウィンターグリーンの秘書
そして、リトル・ピート。リトル・ピートはなんとピーター・ジェイクスのことでした。
今回、ジェイクスのつらい子ども時代が明らかに。 ディアー警察次長に会った時やウィンターグリーンの遺体を見た時に動揺して、様子がおかしかったジェイクス。チャードとは気があうようで笑い合っていましたが、まさかジェイクスにそんな過去があったとは同情してしまいますね。
リトル・ピートと呼ばれていたジェイクス。 ビッグ・ピートは虐待の復讐として、ウィンターグリーンの車に火をつけて爆破。 ジェイクスは杖で打たれ、ビッグ・ピートが犯人だと言ってしまい、ビッグピートはその後、行方不明に。 ブレナム・ベイルにいた仲間たちは発掘調査のふりをしてビッグ・ピートの遺体を探し続けているのでした。
ブレナム・ベイルではおぞましいことが行われていた
ブレナム・ベイルにいた子どもたちが決めた集合の合図「A.P.A.D. A41」の意味は『三銃士』。 「A41」はAll for One(皆は一人のために)という意味で、Aはアトス、Pはポルトス、次のAはアラミス、Dはダルタニアンで、 『三銃士』の登場人物たちを意味していました。ヘンリー、ニコラス、ベニー、アルドリッジの4人を指していたようですね。
さらに、アルドリッジのロザリオのビーズには無線テレタイプで、All for Oneという意味が隠されていました。A41のタトゥーも入れていたアルドリッジ。仲間との絆だけが、心の救いだったのかもしれませんね。
おぞましく、おそろしい虐待事件。 子どもたちを虐待するのも許せませんが、それを隠蔽し続ける警察や医者も最低ですね。
その後、エドはうつ状態になり、自殺…。自殺を捜査したのは、ディアーやチャード。
記者のパターソンと脱走犯のアルドリッジが殺されたのは、虐待を隠蔽し続けるため。 手を下したのが腐った警官たち。腐敗した警官が出世し、上層部まで及んでいました。 ディアーやチャードの他にもまだ腐ったリンゴがたくさんいそうです。
警察の統合計画テムズ・バレー計画。ブライト警視正は自分の草案が通り、ご満悦。前回、モースが警察の統合案をタイプするシーンがありましたが、ここでつながってきました。
新しい警察署を建てる場所はブレナム・ベイルがあった場所。 建設業者、議員、警察が癒着し、利益を得ていることが事件に関係しているのかと思いきや、動機は虐待。
ウィンターグリーンの秘書をしていたアンジェラ。自分を虐待した人物の秘書をしていたなんて…。 封印していた過去の記憶が蘇ったアンジェラは壊れてしまったようで、ウィンターグリーンに父親、ディアーも殺害。子どもを傷つけ、殺されて当然の人たち。 それにしても、父親であるドクター・フェアブリッジも実の娘が虐待されたと知りながら、何もせずにいたなんておそろしすぎる…。
虐待された子どもたちは大人になっても、それぞれ心の傷を隠して、思い出さないように生きているのでした。 ジェイクスは忌まわしい記憶の残る場所ブレナム・ベイルに行くのも無理。浴びるように酒を飲み、痛々しすぎるジェイクス。
まさにブレナム・ベイルは地獄のネバーランド。ヒラリーが子どもに読み聞かせていたのは『ピーター・パン』のようですね。成長し、大人になった子どもたちですが、虐待で深く傷ついた心は『ピーター・パン』のように子どものままなのかもしれませんね。
サーズデイは撃たれてしまう
ディアーにハメられたモースとサーズデイ警部補。 サーズデイ警部補は警察の統合に伴うスリム化で退職しようと考えていました。モースもそれを知り、警察を辞めようと決意。なんと教師になろうと考え、海外に移住しようとモニカを誘うのでした。
モースとモニカはうまくいっているようですね。一番最初にも警察を辞めようとしていたモース。サーズデイ警部補の存在はモースにとってかなり大きかったよう。
サーズデイ警部補は健康診断で血圧に問題があり、歩くことに。サンドイッチの中身を当てるモースがいなくて、ひとりでランチを食べるサーズデイ警部補がさみしそう。モースとサーズデイはお互いになくてはならない存在になったようですね。
退職を決めていたサーズデイ警部補でしたが、弱い者に手を差し伸べるために死ぬまで警官でいると決意。サーズデイ警部補は警官になって28年! 弱者のために動いてくれるサーズデイ警部補みたいな、いい警官ばかりならよかったのに…。まわりは、腐ったリンゴだらけ。
モースは「空を朱に染めて 西へと去りゆく その先のなんと重いことか 触れる手も見ることも聞くことも もうかなわないのだ。絶望が満ちる地には悔恨の日が降る」とアルフレッド・エドワード・ハウスマンの詩 ”How Clear, How Lovely Bright”の一節をよみあげるのでした。
Ensanguining the skiesこの詩は『主任刑事モース』でもよまれたそうですよ。
How heavily it dies
Into the west away;
Past touch and sight and sound
Not further to be found,
How hopeless under ground
Falls the remorseful day.
Case7「鏡の国の少女」に登場した州警察のチャーチ警部補はモースと相性は悪かったものの汚職警官ではなかったようで、サーズデイ警部補に警告。 腐った警官だらけの警察で信用できるのは誰か見極めるのは困難に。
ディアーの命令に従うストレンジに「いつか選ぶときが来ると言っただろう。今日がその時だ!」と言うモースが凛々しいですね。ストレンジはブライト警視正に報告し、応援に駆け付けました。ストレンジは腐りきってはいなかったようで、一安心。
おびき出されたサーズデイ警部補はディアーに撃たれてしまいました。まさか死ぬことはないと思いますが、無事に助かるのでしょうか?
モースは殺人の容疑者として逮捕される
モースも腐った警官としてディアーに殺されそうに。その前にアンジェラがディアーを射殺。父親の電話でディアーがブレナム・ベイルにいることを知ったようですね。 「かわいそうな迷える子どもたち…」と言って自殺したアンジェラ。 虐待に苦しめられた子どもたちを思うと胸が締め付けられますね。
トニーは無事に保護。でも、暴力を振るう父親の元に帰ることになるのはかわいそう。 ランデスマンは逮捕されるのでしょうか。
モースはディアーの車に置き忘れたマフラーをスタンディッシュ警察本部長の殺害の凶器に使われ、殺人の容疑で逮捕!
まさかモースが逮捕されてしまうなんて…。 モニカからプレゼントされたマフラーが凶器になってしまいました。
モースは容疑者扱いされ、留置所に。 シーズン2はここで終わり。シーズン2はこのエピソードが最終回となっています。
殺人の容疑がかけられたモースへの疑いは晴れるのか、サーズデイ警部補は無事なのかが気になりますね。 続きのシーズン3 が早く見たい!
現在、イギリスではシーズン5の放送が終わり、シーズン6の製作が決まったそうです。
原作者のコリン・デクスターは始まってすぐベンチに座ってカメオ出演しています。
Case9「ネバーランド」で流れた曲
- マタイ受難曲 - バッハ