『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case7 「鏡の国の少女」のあらすじと感想 ネタバレ注意!

※ネタバレしています。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』
Case7 「鏡の国の少女」のあらすじ

1966年の夏、ワールドカップで盛り上がる中、博物館で元紋章官のエイドリアン・ヴァイスが首を切られて殺されているのが発見される。カミソリが凶器だったが、そばにはブレイズ=ハミルトン家から遺贈されたインドの刀剣 カタールが置かれていた。

モースは殺害時刻に博物館に来ていた寄宿学校の女生徒に何かを目撃しなかったか事情を聞きに行く。 女学校は昔 ブレイズ=ハミルトン家の屋敷で、100年前の1866年に5人が殺害される陰惨な殺人事件が起きた場所だった。

モースはコートに”SAVE ME"(助けて)と書かれたメモが入っているのを見つける。それは生徒のモードが書き、バンティが入れたものだった。 その後、女学校の生徒の1人バンディが失踪。さらに、エドウィナも失踪してしまう。

女学校ではたびたびヴィクトリア朝のドレスを着た女の子が目撃されており、生き残ったシャーロットの幽霊だと恐れられていた。 モースたち警察はこれ以上 失踪者が出ないように女学校を施錠し、見回りをするが、男が侵入し、モードの喉を切って、突き落とす。

モースはヴァイスが製作していた紋章や指輪から犯人は博物館のブラックだと突き止める。 ブラックはインドでできたサミュエル・ブレイズ=ハミルトンの婚外子ロバートの子孫。

ブラックは婚外子にも相続権が発生する可能性があると知り、ヴァイスに自分の祖先が誰なのか調べてもらっていた。 しかし、ブラックの他に女学校の校長サイムズにも相続権があることがわかり、財産を独り占めするために殺害を計画。 その前に、親戚であるサイムズの存在を知っているヴァイスを殺害したのだった。

ブラックは校長を殺そうと部屋の前にいたところを目撃され、博物館で顔を知られていると思い、モードを殺害していた。 ブラックは校長を殺そうと再び女学校に侵入。 バンディを人質に取るが、モースは 『鏡の国のアリス』に登場する『ジャバウォックの詩』をバンディに思い出させ、犯人の手に噛みつかせる。 犯人のブラックは腐っていた床から落下し、死亡。

ブラックがしていた赤い指輪の中にはフリーメイソンのシンボルマークが。 その証拠品の指輪は何者かが持ち去ろうとしていた。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』Case6 「失われた光」前回のあらすじと感想はこちら≫

Case7 「鏡の国の少女」の感想

1966年のワールドカップでみんな大盛り上がり!  1966年第8回目のワールドカップの開催地はイングランドで、7月11日~7月30日にかけて開催。

地元で開催されているため、応援にも熱が入っていましたね。 みんながサッカーのテレビ中継に夢中になる中、モースは興味ゼロ。サーズデイ警部補にモースとサッカーの話をするより犬とトランプする方がましとまで言われてしまいました。

1966年ワールドカップの結果は、優勝はイングランド、準優勝は西ドイツ、3位はポルトガル、4位はソ連。 西ドイツ、ソ連というのが時代を感じますね。

不気味な事件が起こる

世間はワールドカップでお祭り騒ぎでしたが、博物館で殺人事件が発生。 殺されたのは引退した紋章官エイドリアン・ヴァイス。

ルージュ・ドラゴン・パーシヴァントだったヴァイス。何だかすごい名前の役職! 聞きなれない役職ですが、そんな仕事があるんですね。

パーシヴァント・オブ・アームズ - Wikipedia

大部分のパーシヴァントは、国の公式な紋章統括機関、例えば、 ロンドンの 紋章院又は エジンバラのコート・オブ・ロード・ライアンに勤務している。 中世の時代には、多くの有力な 貴族が彼ら自身の紋章官を雇っていた。政府当局によって雇用されていない若干の民間のパーシヴァントが今日も存在する。例えば、 スコットランドでは、数人のパーシヴァント・オブ・アームズが 氏族長によって任命されている。これらのパーシヴァント・オブ・アームズは、一族のために 紋章学的及び 系譜学的 な重要性に関する諸問題に気を配る。

この殺人事件は女学校と関係していくことに。

100年前の殺人事件、停電する学校、「ノクターン」が流れる音楽室、ヴィクトリア朝のドレスを着た女の子などゴシック・ホラーの雰囲気に。 オルゴールの曲が印象的です。

ちょっと怖いお話でしたが、心霊現象は生徒たちの幽霊ごっこ。 いじめっ子を懲らしめるための遊びでした。

バンティやエドウィナ、モードの3人が協力し、ヴィクトリア朝のドレスを着て、みんなを怖がらせていたようですね。

モードは夏休み中で帰省していると見せかけて、実は学校に残って、隠れていました。バンティも驚いて気絶していましたが、はじめはモードが学校に残っていたことを知らなかったのでしょうか? 

モースが鏡ごしに見たのも、生徒が仮装した姿。それにしても、血まみれのドレスはよくできていましたね。

モニカにウソをついたモース

腐っていた木の床から落下したモースは、背中にケガ。ケガが絶えないモース…。そんなモースのお世話をしてくれているのが、お向かいさんのモニカ。

せっかくモニカを食事に誘ったモースでしたが、ストレンジに頼まれたダブルデートと重なってしまいキャンセル。 しかも、仕事だとウソをついて断ったモースはパブでモニカと鉢合わせしてしまうというの最悪の状況に。

モニカは他の人とデート中だと勘違いしてしまったようです。 しかも、その相手はサーズデイ警部補の娘ジョアン…。

ダブルデートの相手がジョアンだとわかった途端、ストレンジに「遺灰はどこにまいてほしい?」と脅しをかけるモース。サーズデイ警部補にジョアンと付き合っていると勘違いされたモースでしたが、誤解は解けたのでしょうか?

モニカにお花を買っていったら?とアドバイスするジョアンとはいい友達になったようですね。

本当のことを言って、食事を断ればよかったのに、ウソをついたせいでモニカを傷つけてしまったモース。 モニカとの仲を修復することはできるのでしょうか?

それにしても、モースは女学校でもモテモテ。女の子たちから熱い視線を送られるのでした。

前回、登場したイワシの缶詰の広告には落書きが…。時の流れを感じさせますね。

犯人は博物館のブラック

少女たちの失踪事件は最悪の形で終わることに。 ヴィクトリア朝のドレスを着て幽霊ごっこをしていた少女の1人モードが殺害されてしまいました。

子どもが殺されたということで、現場はピリピリし、事件解決のため州警察と合同捜査することに。 ブライト警視正も、いつも皮肉を言っているジェイクスも子どもが殺されたことに憤慨。 管轄にこだわるチャーチ警部補をブライト警視正は一喝するのでした。

チャーチ警部補は復帰前にモースがウィットニー署で軽作業をしていた時にお世話になったそう。 相性は悪かったようですね。

犯人は博物館でアルバイトをしていたブラック。 ブラックは女学校に入り込むため教師のダンビーと付き合い始め、学校の鍵を手に入れたようです。

100年前の殺人事件の真相は、植民地のインドから帰国したサミュエル・ブレイズ=ハミルトンはインド人女性との間にできた息子ロバートを連れて帰宅。 サミュエルは体裁のため 、使用人のピックストックの子どもとしてロバートを育てさせていました。

サミュエルの妻はロバートが夫の実の子どもだと気付いていたようで、聖書に印をつけていました。聖書に書き込まれた文字には怨念を感じますね。

成長したロバートは、自分が手に入れていたかもしれない豊かで優雅な生活をする一家への怒りが爆発し、子どもたちや家庭教師を殺害。凶器はクロケットのマレット。

クロケットとはクロッケーとも呼ばれるイギリス発祥のスポーツ。オリンピック競技になったこともあり、ゲートボールの原型になったそうです。 『不思議の国のアリス』ではアリスがハートの女王にさそわれ、フラミンゴでクロケットをしようとします。

サミュエルはロバートが逮捕され、動機がバレてスキャンダルになるのを恐れて、隠蔽。事件は迷宮入り。 アイルランド人の男が犯人に仕立て上げられ、その男は自殺。

都合の悪いことがあるとアイルランド人のせいにするというのが、おそろしい…。

ブラックの目的は紅茶農園で富を築いたブレイズ=ハミルトン家の財産。 ヴァイスが製作していた紋章がブラックはブレイズ=ハミルトン家の子孫だという証拠に。

犯人のテレンス・ブラックの紋章は盾が黒(ブラック)。 つるはし(ピック)と花のヨルザキアラセイトウ(ストック)で、使用人だったピックストック。

斜めに絡まる植物は紅茶のチャノキの葉。これは婚外子を意味し、ピックストックの婚外子。

紋章にこんなにもたくさんの意味が含まれているのは、おもしろいですね。

ブラックは財産を独り占めしようと、親戚である校長サイムズ殺害を計画。その前に、交通事故に見せかけて殺そうとしたようですね。

財産への執念がすさまじいブラックは何度も校長を殺害しようと学校に侵入。 犠牲になった少女モードがかわいそう。 100年前の事件が今回の殺人にも関係していたのでした。

現実的なモース

心霊現象を研究しているフィットゾウエンに対してモースは「死んだら、それで終わりですよ」とばっさり。 「死んだあとは警察が現場に来ますね」と辛辣なブラックジョークを飛ばすのでした。現実的! 

それにしても、殺人現場の写真が愛好家の間で取引されているというのが、恐怖…。本当におそろしいのは幽霊よりも生きている人間かもしれませんね。

モース家の紋章は銀白三つ球、赤の斧。 家訓は「武器より神を信じる」。

モースはそれはないと即座に否定。 家訓とは違うと否定したり、死後の世界を信じていないことから、モースは無神論者のようですね。 モース家の紋章はかっこよさそう。思い浮かばないと言われていましたが、サーズデイの紋章もどんなのか知りたかった…。

ルイス・キャロルの小説 『不思議の国のアリス』の続編『鏡の国のアリス』。ルイス・キャロルは数学者でオックスフォード大学を卒業しています。

バンティは『鏡の国のアリス』を引用し、「雨の気分しだい。僕らは異議なし。対照的に」と雨に備えてコートを着るモースに語るのでした。『鏡の国のアリス』の中に登場するキャラクター トゥイードルディーのセリフのようですね。

トゥイードルダムとトゥイードルディー - Wikipedia

「 トゥイードルダムとトゥイードルディー」( Tweedledum and Tweedledee)は、 マザー・グースの一つとしても知られている イギリスの 童謡である。この歌は遅くとも 19世紀のはじめには存在していたことが確認されているが、 ルイス・キャロルが『 鏡の国のアリス』( 1871年)の中で使用したことによって広く知られるようになった。兄弟らしき二人の人物が がらがら をめぐって争うという滑稽な内容の短い歌で、今日でも「トゥイードルダムとトゥイードルディー」は互いに相争いながらも実際にはよく似ている二人の人物を指す言葉として用いられている。

バンティが人質にとられてしまったときには、 モースは『鏡の国のアリス』に登場する『ジャバウォックの詩』を思い出させ、噛み付くように指示。 『ジャバウォックの詩』の中の「喰らいつく顎(あぎと)」がヒントになったようです。 バンティは助けてくれたお礼にモースのほっぺたに軽くキス。かわいらしいお礼でしたね。

代々受け継がれてきた赤い宝石の指輪は肖像画でサミュエルがしていたもの。 中にはフリーメイソンのシンボルである定規とコンパスのマークが! また何者かが証拠品を持ち去ったようですね。

フリーメイソン - Wikipedia

この友愛結社(組合)は、管轄上、独立したもしくは一部が東方社(オリエント、大東社系)の形で組織され、それぞれが下部組織(下位のロッジ)から成る自身の管区を管轄している。これらの多様なグランドロッジは、それぞれが認め合い、あるいは拒否し、境界を形成する。また、フリーメイソンリーの主要な支部には、関連した付属団体が存在するが、それらはそれぞれが独立した組織である。フリーメイソンリーは 秘密結社 ...

100年前の殺人事件で1人生き残ったシャーロットはダウン症だったよう。 てっきり殺人事件の犯人かと…。サイコパスな少女がきょうだいたちを惨殺したと思いきや、シャーロットには障害があったため、何も証言できなかったんですね…。

顔が描かれていない肖像画や顔の部分が削られた写真の真相はなんとも言えない悲しい気持ちに。 サナトリウムでひっそりと生涯を終えたシャーロットを思うと胸が痛いですね。

原作者のコリン・デクスターは開始2分ほど、博物館を見学する人としてカメオ出演しています。 オルゴールの曲が印象的で、ゴシック・ホラーのように不気味で怪奇的な雰囲気のエピソードでした。

Case7 「鏡の国の少女」で流れた曲

  • ノクターン第1番変ロ短調 - ショパン
 

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